連載エッセイE
三浦綾子記念文学館を訪ねて
横路 由美子

 三浦綾子さんが逝去されて一年が経とうとしている。
 夏のある昼下がり、旭川の見本林の中にある記念文学館を訪ねた。三浦文学の文字どおり出発点となった『氷点』の書き出しのとおり、ストローブ松やヨーロッパ黒松に囲まれ、木洩れ日をトンガリ屋根に受けて静かなたたずまい。足元の草の中に「二人静か」やドクダミが花をつけている。
 中に入ると、綾子さんが夫君の光世さんに、出版ごとにプレゼントした本が展示されていた。可愛らしいほど純粋な表現で、本の出来上がった喜びと感謝の気持ちがそれぞれの扉に書かれている。

 八三年のあの知事選の後、「喜ぶ者と共に喜び、泣く者と共に泣きなさい」という聖書の言葉を添えて優佳良織のネクタイを御祝に下さった。折に触れ、励ましを頂いた綾子さんの優しくも凛とした姿を思い出し、胸が詰まった。

 木をふんだんに使った館内。テーブルで本を読んでいる人、ノートに何か書いている人、黙ってビデオで綾子さんの講演を聞いている人……。誰も私語をする人はいない。
 廊下の隅々の小さな花瓶には、サビタの花やシーズーの毛を連想させるような鉄線の実など、さりげない心遣いが嬉しい。運営にボランティアの力が大きいという。

 二年前にみんなで作りあげた文学館であるが、多くの人に愛され、癒しと祈りの場にもなっていることを実感し感動した。それは三浦文学が「人はどう生きるか」を問い、共に悩み、語りかける力を持っているからこそであると思う。
 観光バスで人が溢れて大変なときもあると聞いたが、静かさと"経営?"とが両立して欲しいと願わずにいられない。