連載エッセイD
みんなちがって、みんないい
横路 由美子

 JR札幌駅に「ライラックパセオ」という北海道各地の施設や小規模作業所の製品を売っている福祉コーナーがある。そこに、両親のもとから働きに来ているM子さんは生まれる時、へその緒が首に巻きついてほんの少しの間、酸素が脳にいかなかっただけで知的障害を持つに至った。本人の努力と周りの人々の導きのおかげで、今では手紙も書けるし、ワープロも打てる。

 いろんな場所で自己紹介する時、「横路由美子さんは、私の文通友達です」と言ってくれるので、彼女から手紙が来ると何はさておき返事を書く。ライラックパセオの店番も、最初は品物を並べたりお掃除したりだったのが、半年経ってレジを一品に限りできるようになった時、俵万智さんにちなんで「今日は、レジ記念日です」と喜びを書いてくれた。さらに三ヶ月経つと二品、お釣もあげていいと言われたと、一歩一歩難しい仕事に進む。
 あるとき、「外勤をしました」と嬉しそうだったので、「何の仕事?」と聞くと、お釣のために一万円の両替に銀行に行ったとのこと。責任ある仕事を段階を追って指導していく周りの方々の支えも感じることができる。

 何年か前、アジアからの若い女性二人をホームステイで我が家に受け入れたことがある。そんな時、私は我が家だけでこんな貴重な経験を一人占めするのはもったいないし、外国の人たちにも楽しい思い出を持って帰って欲しいので、ホームパーティーを開いて、同年代の人と話せる機会をつくることにした。
 十五人ほどでにぎやかに鉄板焼きを囲んでいると、マレーシアの人、続いてシンガポールの人がそれぞれお国の歌を披露してくれた。
 さて日本は?と私が心の中で心配していると、パセオのM子さんが立ち上がって「それでは、私は日本の歌を歌います」と、きれいな声で「もみじの歌」を歌ってくれた。居並ぶ大学生など形無しである。その場の雰囲気にあった見事な交流…。たくさんのことをM子さんから学んだひとときだった。

 金子みすずの詩のように、人間それぞれが「みんなちがって、みんないい」のであり、一人ひとりの個性が大切にされる社会であってほしいと思う。