連載エッセイ37
一歩でも具体的に何かを
横路 由美子

 先日、NHKテレビ『その時歴史は動いた』で、国連に日本が加盟した時の重光外相の感激を伝えていた。
 今、国連の決議や力をどのように評価するか国会で議論になっているのを見ると隔世の感じがする。

 第一次世界大戦で戦争の悲劇を経験した国々は国際連盟を結成したが、日本は満州事変後、国際連盟を脱退し、第二次世界大戦への道を急いだ。
 その反省の上に、戦後すぐ新たに国際連合が作られたが、日本の加盟は1953年まで認められなかった。
 51年、国連加盟に先立って日本はユネスコ(国際連合教育科学文化機関)に加盟した。ユネスコは「戦争は人間の心に生れるものであるから、心の中に平和のとりでを築かなければならない」と、教育や科学、文化の分野で国際理解を深め、お互いに価値を認め合い寛容の精神を育てて世界平和の礎とするために設立された国際機関で、現在187ヶ国が参加、現在の日本の会長は画家平山郁夫氏である。

 加盟がスムーズにいったのはユネスコの設立精神に賛同して、47年仙台から燎原の火のように広がったボランティアの民間ユネスコ協会運動があったからである。
 私も、札幌ユネスコ協会の会員であるが、日本ユネスコではここ10年くらい世界寺子屋運動といって、学校に通えない子供たちへの援助や学校建設、もう一つは文化遺産、自然遺産両方にわたる世界遺産保存運動に力を注いできた。
 北海道では、バングラデシュ続いてカンボジアに学校をつくったり学生たちをスタデイツアーに送ったりしている。平和や環境への取り組みも大きな柱だ。
 この秋、苫小牧で北海道ユネスコの大会が開かれたが、その分科会で石狩と札幌の小学校で取り組まれた世界寺子屋運動の実践報告はとても印象に残った。

 まず、子供たちに身につけさせたい3つの力として、
 @想像力・・・世界のどこかで起きている事へ思いを馳せる。それをどれだけ自分の生活とつなげて考えるか。
 Aプロジェクト力・・・ゴールを設定しそのための手段と期限を決める。
 B情報処理能力・・・リーフレット作ったり思いを伝えるコミュニケーション能力・・・それらを子供たちに強要せず、上手に丁寧に導いていた。

 特に想像力の手だてとしてテレビのドキュメンタリーなどで世界の同世代の子供たちの実情を学び、学校建設に現地訪問をした人の話を直接聞く。学校に行けない事情や悲しみ、字がわからないハンデイなど充分に話しあう。
 この一連の学習をする中で、子供たち自ら、地域の方々に協力をよびかけ、書き損じはがき4500枚を集める結果になった。
 子供たちの感想「ためになった学習は今までにもあったけれど、勉強で温かい気持ちになったのは初めてでした」の言葉に「教育の力」「協働して生きていく力」をつけるということは、こういう事だと感心した。

 10月半ば、やはりユネスコでオイスカという団体に協力して、当別の「道民の森」に植林に行った。参加者は、子供や我々高齢者も入れて96人、大学生の参加もあったのはうれしい事だった。
 かつては水田だった所が、今、地球温暖化軽減のために森に変わろうとしている。
 厳寒の地で原始林と文字どおり戦いながら開拓入植して農地にし、米を作ってきた人たち、割の合わない仕事はいやと後継者もいなくなったのだろうか、そんな事を考えると必ずしも気持ちがすっきり整理されるわけではない。
 しかし、苗木一本が育つ中で大気中から1トンもの二酸化炭素を吸収してくれると思うと植林にも力が入る。こんな事業も若者を巻き込んで一緒に汗を流す事が大切だ。
 家庭でも、地域でも学校でも、「なにもできない」と嘆くより一歩でも何かをやり出していきたいものである。




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