連載エッセイ31
「あなたも行って、同じことをしなさい」
横路 由美子

 11月、バングラデシュからアラムさんが来道された。彼は車イスと杖を体調に応じて使い分けている。
 10年以上も前、オーストラリアで開かれたDPI(障がい者インターナショナル)の大会で北海道団の福祉村の阿部史郎さんたちが彼に出会った。それ以来、福祉村のメンバーや今は亡きオーロラ作業所の塩見建樹さんを中心に、アジアのもっと困難の中にいる障がい者との連帯をささやかながらも続けていこうという思いで、バングラデシュの運動を支援してきた。アラムさんの報告ではいま障がい者団体の事務所に51人のスタッフを抱え、ダッカを中心に障がい者福祉の運動が広がっている。

 印刷会社の社長さんだった幡本慎一郎さんが脳卒中に見舞われたのは20年以上も前のことである。一時は絶望の淵に立った幡本さんは、療養中に見た一所懸命に働くアリの姿にさえ励まされたと当時を振り返られる。
 そして人生の途中で障がいを負うことの辛さを体験された経験から、塩見さんのアドバイスも受け、「北海道ストローク友の会」そして「ユートピア作業所」を設立された。
 自信をなくし出不精になった人たちの、旅行や趣味、学習会、少しお金にもなる物品作りやパソコン入力など、リハビリも兼ねた活動の範囲はどんどん広がっている。

 このような小規模作業所も札幌で30年前、地域の中で普通に当たり前に助け合って生活したいという思いで始まり、いま130ヶ所を越えるまでになった。高い家賃、少なすぎる補助金、委託される仕事の減少と低価格など四苦八苦しているのが現状だ。
 国会を通過した「障害者自立支援法」は具体的な就業促進や所得保障の仕組みが作られなければ絵に描いた餅になる。
 それにしても、何の保障も目途もない時代、「こういう場所が必要だ」と強力なリーダーシップで取り組んできた今は亡き小野寺昌之さん、菅原道子さん、塩見さんたちが限りなく懐かしい。こんな実践が社会を中から変えていく。社会不安、少子高齢社会と言われる中、これからは作業所が地域の中で一層意味のある存在となっていかなければならないだろう。

 明治の初め、北海道開拓の助言のためにアメリカ農務長官を辞めて日本に来たホーレス・ケプロンは、68才の誕生日を北海道で迎え「『あなたも行って、同じことをしなさい』というサマリア人の話を自分なりに実践したかった」と日記に書いている。ユダヤ人とサマリア人の対立差別の激しかった時代に、追いはぎにあったユダヤ人をサマリア人が助けたという聖書の中の話である。
 新年にあたって、お互い自分は小さくとも、それぞれの持ち場で志を強く高く持つこと、そして人の輪の広がりと力を信じていきたいと心から思う。




エッセイNへ インデックスへ