連載エッセイB
「十勝野の夢を後にして」
横路 由美子

 七月の半ば、十勝の新得町に行った。駅には四十代に入ったばかりのおしゃれで元気なTさんが愛車のRVで迎えに来てくれていた。農場の若おかみさんである彼女は、ご主人とそのご両親、四人の男の子の八人家族を切り盛りしている。

 その日は彼女が代表をしている「十勝野に夢を育む会」の夏の研修会が新得で行われるというので、私も横路の知事時代からの農村に住む友人達に会えるのを楽しみに参加した。

 この会の目的には「(一)夢ある農村生活を求める自分探しの応援団です、(二)仲間との交流を通し、自らをステップアップします」とあり、どんな問題にも愚痴っぽくなく前向きで気持ちがいい。
 大根抜きで腰を痛めない方法から、姑世代との暮らし方、ビニールなどの農業廃棄物のこと、遺伝子組み換え食品まで、様々なテーマで話し合いや勉強会を持ち、機関誌で会員交流をしている。

 会員は、ファームスティといって納屋を改造して都会の人たちを泊めている人、趣味で始めたドライフラワーやクッキーなどの小さなお店を数人で開いた人、家族で作った新聞を入れて採れたて野菜を産地直送している人など、柔らかく新しい発想を実行し、いのちを育む仕事に直接つながっている農業を誇りに思っている元気いっぱいの素敵な女性たちである。

 「草取りの仕事は何年たっても辛いけど、この会で友達になれたから、十勝晴れの空の下、広い畑でただ一人草取りをしていても、みんないま同じように仕事をしているんだなあって、連帯感が沸いてきて孤独でないの」というAさんの言葉にみんなが頷いていた。

 大量生産、大量廃棄、自然破壊を突っ走ってきた二十世紀であったが、自然と共存する大きな価値観と暮らし方の転換なしに、二十一世紀の夢は育めないと思いながら十勝を後にした。