連載エッセイA
「あかね色の空に」
横路 由美子

 投票日の3日前、函館の集会に出ることになり、夕方、丘珠空港発のプロペラ機に乗った。小一時間ほどの短い空の旅なのだが、高度が低いので実に良く下界が見え、さながら遊覧飛行である。

 青く澄んだ支笏湖、雪を頂いた樽前山、カルデラに円く雪の詰まった有珠岳と昭和新山、右手には洞爺湖も見えてくる。渡島上空にくると山の中に、あるいは海岸沿いに集落が見える。あれは八雲町?鹿部かな?南茅部に椴法華村…。

 目を凝らして見ていると、83年のあの「不可能を可能にした」知事選のことを思い出して胸が熱くなった。あの町で夜、お寺でご馳走になった鱈なべ。大きな鍋で、何十人もの人がふうふうして食べながら議論を交わした。あの村の漁師の人たちが作ってくれたごっこ汁も美味しかった。
 当時は朝7時が選挙運動の開始時間。遠のく納屋から出てきてタオルを振って応えてくれた農家のふたり。マイクで呼びかけると昆布採りの小船の上で昆布を大きく振って「聞こえるよお」と声が返ってきた。夜、イカ釣り船にマイクを向けると、遠い沖からパッパと電気を点滅させて合図をしてくれた。

 数え切れないたくさんの感動をいただいた選挙だった。みんなが燃え、みんなが明日の北海道をつくろうと行動した。大きなうねりのような、人々の想いがあった。あのときの熱い想いがあれば何でも出来る気がする。

 「明日の天気は変えられないけど、明日の政治は変えることが出来る」
 眼下に広がるパノラマのような景色の中に、人々のかけがえのない毎日の暮らしがある。喜びも悲しみもみんな包んで、あかね色に空を染めながら日が暮れていく。
 飛行機の中で、改めて政治の重みを感じたひとときだった。