連載エッセイR
ボンビーズ 〜クラスター爆弾の悲劇〜
横路 由美子

 日曜日の午後、NHK教育番組のチャンネルをいれると、今年の教育番組国際コンクールで49ヶ国、183本の出品作から選ばれた4本の優秀作品が放映されていた。
 どの作品も、作品の底に流れる問題意識が人間的で、映像、語りも静かな説得力があり、多くの人たちに見てほしいと思う作品ばかりであった。

 その中のひとつ、カナダの作品『ボンビーズ 〜クラスター爆弾の悲劇〜』は、私自身の「知らなかったこと」を教えてくれて大きな衝撃を受けた。
 ベトナム戦争の頃、1964年から1973年の10年間にかけて、ベトナムに隣接するラオスでは、特にその北部の農村地帯にアメリカの爆撃機により200万トンに及ぶ爆弾が落とされた。
 なかでもクラスター爆弾といわれる爆弾は、1つの爆弾に300のボール大の子爆弾が入っており、またその一つ一つに80個のベアリングが入っている。爆発と同時に超スピードで次々と連鎖的に爆発する。最後のベアリング1個で500メートル四方の範囲に飛び散るというから、300×80の爆発威力は想像を絶する。
 「ボンビーズ」とは爆発しないまま地面に落下した子爆弾のことを地元の人々が呼ぶ呼び名である。農村の至る所に転がったり埋まったりしていて、農民や子供たちの命を未だに奪い続けている。ボンビーズはおもちゃのボールになりそうだし、そっくりの果物もあるという。
 NGOの人たちが子供や農民を集めては、いかにボンビーズが危険かを教育している。毎年毎日、カナダやイギリスの地雷処理班が懸命に働いているが、この1000万発といわれる不発弾を取り除くにはまださらに30年かかるという。なんという戦争の後遺症!
 ベトナムに隣接するラオスは、いわゆるホーチミンルートを疑われ、「共産主義の繁茂を許すな」という大義のために狙われた上に、タイの米軍基地からベトナムに爆弾を落としに行った爆撃機が、落とし損ねたクラスター爆弾を帰り道にラオスの空からバラ撒いたのもあるという。

 戦争で使われる大義や正義のまやかし、高い空の上の人や動物の命の見えないところで行う蛮行の無神経さ、戦後数十年にわたって生命を奪い農作業を妨害していることへの自責もない大国の傲慢…。
 着飾ることも忘れて懸命に農民たちとともにボンビーズ除去に励むNGOの人たちの姿に、私は見とれていた。

(執筆は2002年)




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