連載エッセイQ
小山内美江子さんとボランティア
横路 由美子

 「3年B組金八先生」や大河ドラマ「翔ぶが如く」などの脚本家として有名な小山内美江子さんと親しくお話しする機会があった。
 小山内さんは12年前、還暦を期に、母親の介護も終ったこともあって、これからは自分のお金と時間を自分の気持ちに沿って使おうと思われた。湾岸戦争の中で、たくさんの難民が生まれているのを現地で見て、何かできないか、それも社会に出る前の若者を巻き込んでやりたいと思われたそうだ。
そして、俳優の二谷英明さんらと組んでJHP(ジャパン・チーム・オブ・ヤング・ヒューマン・パワー)学校を作る会を立ち上げ、NPOの資格も取った。札幌でもHGCグループが応援、私も支援パーティが開かれるたびに友達を誘って出席していた。

 これまでユーゴやコソボ、インド、アフリカなどに100名を超えるボランティアを派遣してきたが、1993年から重点的に取り組んでいるのが、カンボジアの学校建設と教育環境向上のための支援である。
 特にポルポト政権の時代、知識層が抹殺されて不在のため、教師の育成から、教育、芸術、情報、衛生教育まで取り組まねばならないが、今までに60棟を超す校舎を建て、日本からリコーダーやピアニカといった小学生が使える楽器や文房具を送り、来年度は孤児院を2つ建てて、ストリートチルドレンの居場所を作っていきたいと小山内さんはエネルギッシュに話された。

 このプロジェクトで特徴的なのは、ボランティアとして春夏、毎回30人を超す学生達を現地に連れて行き、一緒に寝泊まりして、ブランコを作ったり校舎の屋根を張ったり、掃除をしたりすることだ。3週間から1ヶ月のこの体験で、学生達がたくさんのことを感じ学ぶことを大きな目的の一つにしてきたのだが、金八先生で教育界に常に先駆的問題提起を投げかけてこられた小山内さんだからこその発想だと思う。
 小山内さんは「日本の学生はあまりにいろんな厳しい現実を知らなすぎる。その結果、いろいろな人たちに対する想像力、共感力を持っていない」と21世紀を担う次の世代を心配される。

 最近も金八先生のなかで「性同一性障害」で悩む子のことを取り上げたり、高齢者デイサービスと教室を併存させたり、というような時代の先頭をいく問題提起ができるということは、教育問題にとどまらず人間としていかに生きるかということに、小山内さんが全人格を懸けておられるからである。

 ところで先日、中央教育審議会が教育基本法の見直しを目指して中間報告を出した。「伝統文化を尊重し、愛国心を涵養するべし」というが、政治家を含め今の大人社会がどんな国のあり方を子供に見せているか恥じ入るべきである。
 憲法も教育基本法も、それに欠陥があるのではなく、むしろそこに述べられている理想を実践していないからこそ問題が起きているのだ。小山内さんが、自らのお金と時間と体力を懸けて若い世代に教えようとしておられる姿に学びたいと思う。




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