連載エッセイI
静かな人の説得力
横路 由美子

 10月13日朝から、わが夫も委員である衆議院テロ対策特別委員会が開かれた。各党推薦の5人の参考人が意見を述べるというので、私も傍聴した。

 軍事知識を繰り広げた小川和久氏に続いては、アフガンで日本人と現地スタッフの力を合わせ17年間にわたって医療活動、さらには井戸掘りに従事してこられたペシャワール会の中村哲医師の番だ。
 飾り気のない実直で静かな語り口。「自衛隊の派遣をどう思いますか」との質問に、「アフガンの人たちは日本人にとても良い感情を持っているので、自衛隊といっても現地の言葉も習慣もわからず、軍隊の形で入っていくのは有害無益だと思います。外から見ればアメリカの軍隊と日本の軍隊が一緒になってやってきたと思われます」と答えられると、自民党議員が気色ばみ「その発言は、自衛隊に失礼なので取り消してもらいたい」と発言。「参考人として忌憚の無い意見をということでしたので、私の思うことを率直に申し上げたのですが、それが失礼だったでしょうか?」と中村先生は静かに応えられた。

 中村先生が10月末まで日本におられると聞いたので、何とか北海道にお呼びして話を聞けないものかと思った。幸いにして、私の福岡高校の4年後輩。準備期間は一週間しかなかったが、午後4時からは酪農学園大学で公開講座として、6時半からは札幌で市民団体や個人からなる実行委員会主催の講演会としてお話いただくことになった。
 新千歳空港までJRでお迎えに行く。酪農学園大学の黒沢記念講堂も500人の学生や一般の人たち、札幌の会場も急な設定であまり広いところが取れず、急遽、椅子を一部はずして絨毯に座ったり壇上にも上がったりで700人に聞いていただく。
 武力ではなく、平和を創るために何かをしたいという熱い想いが集まって、両方の会場で寄せられたカンパは実に200万円近くにもなり、戦火と飢餓のアフガンの人たちにパンの一種であるナンを送るのに役立てることが出来るとみんなで喜んだ。心から感謝したい。

 後日の新聞で9歳の息子さんが最近脳腫瘍になられたと知った。そういえば途中で「気掛かりな子供がいるので、家に電話したい」と言われたことを思い出し、ご自分の事情は一言も話さず、そんなご家族との大事な時間を北海道の私達のために割いて下さったことを、本当に申し訳なくありがたく思っている。
 「テロと報復の憎しみの連鎖を断ち切っていかなければなりません。私達は、テロリストと同じ次元に立たず、暴力では出来ないことをアフガンの人たちにもっともっとしましょう」との中村先生の言葉をかみしめたい。