札幌都市研究センター 第160回研究例会
シリーズ討論"21世紀を迎える札幌の課題"No.6
講演『今後の政局と札幌に期待すること』
講 師 横路 孝弘
1998.10.16 札幌


 どうも皆さまお晩でございます。今日はお招きいただきましてありがとうございました。
 最初に、今日終了いたしました今国会の中心議題であります金融問題について、若干そのポイントなどをお話させて頂きたいと思います。

〈これからは議員立法で〉
 先の参議院選挙では参議院が与野党逆転といいますか、自民党が少数派ということになりました。そういう中で今国会では金融問題について、特に銀行が破綻した場合にどういう処理をするのか、また破綻前の銀行に対してどういう支援をするのかということが審議の中心だったわけです。
 今国会の非常に大きな特徴のひとつは、これは各新聞などでも大きく報道されていますけれども、議員が自ら立法して、それが中心になって議論が展開されていったことであります。普段は政府案に対する修正案をめぐって議論するわけですが、対案として出した議員立法の金融再生法案が議論の軸になって成立した、これはかつてないことだと思います。
 この考え方は旧民主党が2年前にスタートしたときから、国会改革ということで、いつも政府が出してきた法律案をチェックする役割に終わっている野党から、積極的に法律案をつくって出していく政党にしようではないかということで民主党の活動ベースのひとつにしてまいりました。議員立法といっても議員だけが勉強して作業するのではなくて、多くのNGO、NPOの人たちの声を聞いたり、市民や学識経験者と一緒に法律案の策定作業をしようということをひとつの国会改革のポイントとして旧民主党はスタートしたわけであります。手掛けたものとしては民法の夫婦別姓選択制ですとか、河川法の改正案、あるいは政府提出のNPO法案の修正案など、だんだんと数を増してきております。

〈市民活動をバックアップ〉
 またそういう活動を行なうのと同時に、市民運動と国会をつなぐ組織として市民政策調査室というのがスタートいたしまして、まだ非常に弱い力ですけれども、将来は大きなものにしていきたいと考えております。その市民政策調査室というのはいわばアメリカにありますNGO・NPO支援センターのような組織でありまして、例えばアメリカにはもう100年以上前にフィラデルフィアでスタートしたNCL(ナショナル・シビック・リーグ)という組織があります。これは専従のスタッフが20人くらいなんですけども、専門家は2千人くらいおりまして、例えば地域の中で何かの開発をめぐって行政と市民との間に議論が起きたというようなときに、よく公聴会をやりながら意見集約を図るわけですけれども、そこへ専門家を派遣して専門的なアドバイスを行うというような組織があります。
 こういう組織はアメリカにおける市民活動に対して大変大きな力を持っているわけでありますが、そういったものを私どもは国会活動と市民運動をつなぐものとして、できれば市民の様々な活動に対して情報提供をしたり、政策化することをバックアップしていこうということでやっているわけであります。
 今まで議員立法を中心にして国会を運営していく実績を積み重ねてきましたが、今国会ではまさに私どものつくった議員立法が法律として成立しました。国会は法律をつくるところですから、我々がつくった法律を行政が執行するという形をこれからいろんな分野で広げていきたい、そういう意味では今国会は初めてのケースではないだろうかと思っております。
 金融再生法案の与野党協議の初め、自民党から参加してきたのは若い議員でしたが、幹部クラスの議員には大蔵省がバックにいます。協議終盤になって自民党から出された修正案を私どもの政調スタッフが、「ああこれは大蔵省のタイプライターで打った修正案だ」と、言い回しや表現方法などを指摘したんです。そこで調べてみたら修正協議をやっている部屋の隣に大蔵省の幹部を待たせておいて、そして自民党は初め彼らの意向を受けながら作業をやるということだったようですが、さすがに途中からはそれがなくなりまして、議員同士の話し合いになって今回のような法案にまとまりました。

〈金融機関の選択は厳格な審査で〉
 日本で不良債権処理が問題となってからもう8年も経っていますし、バブルがはじけたときにアメリカが日本は金融機関だけで100兆円の不良債権を持っていると指摘したわけですけれども、今までそれを情報公開しないで問題をなんとか表に出さないで処理をしようとしてきた従来の大蔵行政のもたらした結果が今日の金融問題だと思います。92〜93年くらいから信金や信組などあちこちの銀行が倒産しましたし、94年には住専問題が起きました。その対策として政府は低金利政策をとって金融機関に業務利益をあげさせたんです。この8年間で銀行はだいたい30兆円くらいの業務利益をこの低金利政策でもらっているわけです。
 政府はその内に景気が良くなって株と土地の価格が上がれば、その中で不良債権処理ができるだろうというように考えたわけですが、昨年の政策選択の大きな失敗で今日のような厳しい状況に直面しました。株はどんどん下がって、いまでは有価証券の含み益を持っている銀行は東京三菱が持っているかいないかで、もうほとんどの銀行が含み損になっている。大きいところでは富士銀行や安田信託などが有価証券をたくさん持っていますから、8千億円から9千億円を越える含み損になっています。ですから現実に貸しているお金を全部回収して、それに自己資本を加えても預金者が払い戻しを要求したときに払えない、いわゆる債務超過という状況はかなりの銀行であるのではないかといわれているわけであります。
 ご承知のように2001年の3月にペイ・オフで、今度は国民が金融機関を今まで以上に選択することになりますから、問題を曖昧にして信頼のないまま続けても、結局は国民の選択によって潰れる銀行がたくさん出てくるのではないかということで、私どもはやはり今この時期に金融機関を選択すべきだと考えております。しっかりした経営なのか、あるいはもうかなり怪しげなのか、それを判断するためには厳格な検査をしっかり行なって、そしていわゆる第2分類、これは景気が良くなれば問題ない債権になるし景気が悪くなれば回収が難しくなる性格の債権ですけれども、これをちゃんと第2分類として計上する。というのも各金融機関はアジア向けの債権と系列ノンバンクへの債権は第2分類としてはほとんど計上していないんですね、これを計上すること。
 それから引当率についてですが、高く設定している銀行でせいぜい5%、ほとんどは1%前後の引き当てしかしていないんですね。日銀発表の3年間の第2分類の累積損失率というのは16.7%です。アメリカではだいたい3年間で15%くらい債権が劣化しているということですから、15%くらいの引き当てをちゃんとやるべきではないかと思います。
 もうひとつは有価証券の評価はやはり時価でしなければいけないということです。破綻時など最終的な清算をするとき、いま持っている有価証券の評価を簿価でできるわけありませんから、時価で評価しなければなりません。日本の場合はこの点で粉飾決算の構図・構造が出来上がっているわけです。
 いま述べた3点を含めて厳格な審査で自己資本比率を出して、その結果債務超過の銀行は破綻処理をしたほうがいいのではないか。プラスのところは、例えば0%から2%くらいのところですと大規模なリストラや経営者の責任を明確にしたり、株主の責任をはっきりさせるなど、私どもとしてもいろいろと柔軟に対応したいというように考えております。
 私どもが出したその法案と金融早期健全化スキームで自民党と対立したのは、一言で言えば自己資本比率の算定をちゃんとするのかいい加減にするのか、その違いだったわけです。この法律案が衆議院を通ったときには株価がちょっと上がりましたけれども、これは円高にブレているということもあると思います。昨日は1万2千円台に下がって、今日はまた1万3千円台を取り戻したりしていますが、この程度の措置を取ったからといって、日本の金融システムに対して国際的な信頼性が増すことには多分ならないだろうと思っています。

〈道銀・札銀にも公的資金を〉
 国会では長銀問題などがいろいろと議論されたわけでありますが、北海道の問題は皆さま方が新聞などでご承知の通りでありまして、拓銀からの承継問題で、特に第2分類をめぐって承継するのかしないのかまだ決まっていない企業がずいぶんあります。私どもは1週間ほど前に道銀や北洋銀行、そして拓銀とお話をしました。拓銀の話によりますと、第2分類でまだ決まっていない企業が5百企業、金額にしてだいたい1千百億円。それにプラス2企業、この2企業だけで1千6百億円くらい、もうちょっと多いかもしれません。つまり2企業というのは地崎と丸井ですね。金融監督庁の検査ですと地崎は第2分類ではなくてどうも第3分類ということのようであります。
 道銀と話をしたときに、第2分類の企業を引き受けるからその分自己資本を注入してほしいというので、道銀の藤田さんにいくら必要なんですかと聞いたら、2百億円から3百億円というんですね。ところが第2分類を1千億円分引き受けたとしても、下がった自己資本比率分をカバーするにはだいたい45億円から50億円くらいで充分なんですね。なぜ2百億円から3百億円といっているかというと、この機会にさらに自分の自己資本比率を高めようということなんだろうと思います。ここも経営は決してよくありません。最近は業務利益が年間で3百億円くらい上がるようになっていますが、資産そのものは非常に悪いものをたくさん抱えておりますので問題は非常にあります。
 いまの北海道経済の問題は、ともかく金融システムが崩壊していること、一言で言えばそれに尽きるだろうと思っております。ですから我々としても道銀や札幌銀行などにも公的資金が注入されるように北海道の議員団で党全体を説得して、そういう枠組みになりましたので、そこは問題ないと思います。しかし地崎を受けるということの影響はかなり大きくて、そのために飛ばされる中小企業が相当出てくるのではないかということを私どもは心配しています。
 よく金融問題の前半では民主党は点数を稼いだが後半では点数を落としたといわれていますが、私は全体としては80点くらいの国会だったのではないだろうかと思っています。特に先ほどいいました議員立法を中心として国会が動いていくという仕組みを定着させていくことは大変大事なことだと思っています。
 今日はお話できませんが、今回皆さんにお渡しした資料の中にも議員立法のものがあります。ひとつは外国人の地方参政権ですね。「永住外国人に対する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権等の付与に関する法律案骨子」というのは、私ども民主党と公明との共同提案で、今国会に出したものです。それからもう一つは情報公開についてで、皆さんのお手元の情報公開に関する資料の一番下の最後のところに野党修正案に対する回答というのがあります。この野党修正案というのは自由党から共産党まで含めて全野党で一致した要求が12項目あります。左側に書いてありますのが野党の修正案、それに対する自民党の回答が右側にあります。これをよく見比べていただくと、自民党はほとんどゼロ回答でして、情報公開に物凄く抵抗しているという姿がこれを見るとお分かりいただけるのではないでしょうか。これも政府提出の情報公開法案に対して、私どもの方で修正案をつくったその内容ですので後で見ていただければと思いますが、私どもの本来の仕事であるこういう立法作業をこれからも積極的に積み重ねていきたいと思っております。

〈180小選挙区単独勝利をめざす〉
 これから野党共闘がどうなるかということなんですが、この前の参議院選挙を踏まえれば、自由党から公明、社民党まで、共産党を除いて、野党が全部協力すれば完全に政権は交代する選挙結果ですよね。しかしなかなかそう簡単に行かないわけでありまして、11月に新しく公明と新党平和が一緒になったときにどういう形になっていくのか、私どももまだ見極めがついておりません。本当に野党で選挙協力ができるのか、北海道レベルでもいろいろと話してますけれども、どこそこは自民党候補を推薦せざるをえないとか、そういうような話もありまして、地域における話し合いと全体的な枠組みがどうできるかということにかかっております。
 衆院選では私ども単独でもある程度勝ち得る体制をということで、300小選挙区全部には立てられませんが、せめて200選挙区くらいに候補を擁立して180選挙区くらいの当選を目指していきたいと思っております。しかし協力できるところはできるだけ協力していこうというように思っております。

〈民主党のめざす『民主中道』について〉
 そこで今日これからお話したいのは、これから私どもが自民党に代わって政権を担うとして、どういう社会を目標にしていくのかということについてであります。これについては党内の議論もまだ不足しています。ただ私どもは結党のときに『民主中道』を基本的な路線とすることに決めました。またこのときに議論をしてお互い同意していることは何かといいますと、ひとつは政府が全部何でも行うという大きい政府論ではないこと。これは旧来的な言葉でいえばオールド左派ですね。オールド左派の考え方というのはヨーロッパを含めて大きい政府論だったと思います。それからもうひとつは市場万能主義もとらないこと。これはどちらかというとニューライトの路線だったと思うんですが、そういう意味でいうとオールド左派でもなければニューライトでもない、「第三の道」とブレア首相は言っているわけですが、日本の場合は私どもの言葉に直せば公的セクターと民間セクターに市民セクターを加えて育てていって、この3つのセクターの役割分担というのを明確にしていくこと。豊かさと同時にやはり社会的な連帯とか公正というものがしっかり両立する社会というのをつくっていかなければいけないということを基本としております。『民主中道』というのは私が英訳すればセンターレフトということになりますが、党内では必ずしもセンターレフトという言葉が定着しているわけではありませんので、保守中道か左派中道かという言葉の議論をしても仕方がありませんから、いま言った内容で『民主中道』というように考えています。
 その公的セクター、民間セクター、市民セクターの役割分担をどうするのかということが実は日本が今日直面している行財政改革というものの中身だと思うんですね。あまりにも中央集権的で中央政府が一方的に全てを決めていたという国の形や仕組みから、中央政府の権限をひとつは地方へ、ひとつは市場へ、ひとつは市民へというように移譲していって新しい社会を構築し直すということだろうと思っています。したがって中央政府の仕事は外交や安全保障など国の根幹となる仕事をしっかり行なって、できるだけその他の仕事は市民のところで参加し選択して決定し得るような、地方分権というものですね、地方へ権限を移譲していくということがまず大変大きな点ではないだろうかと思っています。

〈地方へ…省庁スリム化と地方分権〉
 地方へ、これは地方分権ということですが、いまは大事なところを迎えております。きっとこの会でもいろいろと議論されたと思いますが、ご承知のように第1次勧告から第4次勧告まで行なわれ、この5月には地方分権推進計画が閣議決定されました。いまは第5次の勧告に向けての作業が進められていますが、そのひとつは私ども民主党は反対した法案ですけれども、いわゆる中央省庁等改革基本法です。この中央省庁等改革基本法の中に、46条で公共事業の見直しというのがあるんです。46条は「政府は次に掲げる方針にしたがって公共事業の見直しを行なうものとする」とあります。「公共事業に関し国が直接行なうものは、全国的な政策及び計画の企画立案並びに全国的な見地から必要とされる基礎的または広域的事業の実施に限定し、その他の事業については地方公共団体に委ねていくことを基本とする。国が個別に補助金等を交付する事業は、国の直轄事業に関連する事業、国家的な事業に関連する事業、先導的な施策に関する事業、短期的に集中的に施工する必要がある事業など特に必要があるものに限定し、その他の事業に対する助成についてはできるだけ個別の補助金等に替えて適切な目的を付した統合的な補助金等を交付して地方公共団体に裁量的に施工させること」という公共事業の見直しについての規定があります。いまはこれを巡って、道路、河川、港湾、土地改良、砂防、海岸、治山、空港、都市公園について、どの範囲を直轄にするのか、どれを地方に任せるのか、いわゆる自治事務とか法定受託事務とは別に、事業の性格によってその区分を行おうというのがありまして、地方分権推進委員会が各省庁と物凄いせめぎ合いをしています。中央省庁の方はほとんど、何と言いますか、ゼロ回答ですね、完全なゼロ回答をやってます。
 公共事業の補助金というのは、例えば道が国から補助金をもらって道路を造る、河川の改修を行なうというときには、設計図面を管轄の中央省庁に持っていくんですね。道路ですと横断図面と平面図と縦断面。横断図面は200メートル毎に1枚とか、膨大な設計図面を建設省まで持っていき、そこの技術者の人たちが、道路構造令に合っているかどうかというチェックをするんです。設計変更も許可が必要です。河川についても同じですね。日本の場合は建設省も農水省もそれから運輸省もそうですが、技官といわれている技術者が中央省庁のお役人のほぼ半分を占めています。道路について中央省庁がこんなにチェックしているような先進国というのはありません。開発途上国はスタートしたときにまだそれほど技術集積はありませんから、どうしても専門家を国が採用して、道路の設計を指導する、あるいは保健や医療の分野で指導することはあります。でもいまの日本には道路を造る能力は地方にだって民間にだって充分あるわけですから、事業ごとにそれぞれ個別の補助金の申請をして図面を持っていってオーケーしてもらうのではなくて、これはもう地方でやりなさいといって一括で、包括的な補助金として交付するというような仕組みになりますと地方に選択権が増えますし、中央では権限の縮小が進み、国の仕組みや枠組みを変えることによって必要なところには必要な人員を配置し、必要でない人員は減らしていくという改革ができるんだろうと思っています。

〈中央省庁の抵抗と嫌がらせ〉
 この公共事業の見直しがやれるかやれないかは実は大変重要であります。だから自民党や族議員は絶対離さないんです。中央省庁もこれを中心に地方や地域をコントロールするというパワーを持っているわけでして、いま建設省などが裏で実にいろんなことをやっています。ですから、市長にしても町長にしても、中央省庁とのトラブルというのはいろんな意味で経験していると思いますが、あとでみんないじめられるもんですから、だんだんそのことを表に出さなくなってきたんですね。これは私どもが反省しなければいけないところで、ここにお集まりの方の中で市役所にお勤めの方がおられるかどうか分かりませんが、もっと表に出して議論すると、中央と地方との関係の問題点がはっきりしてくる思います。
 先頃ある地方6団体がこの地方分権について補助金の事例集というのを出したんです。「108煩悩事例集」といっているんですが、地方6団体が出した補助金申請のひどい事例集です。例えば文化財に指定された建物の保存で30万円か50万円くらいの修理代を申請するのに、申請先の省庁部局は文章や写真をやたらと要求し、150ページくらいの書類を出させられたわけです。それにかかった職員の人件費などを考えると、50万円もらうために結局は百万円くらいのお金がかかってしまったというケースがあります。
 もうひとつは文部省のケースですけれども、ある町で中学校の屋内体育館を改修するのに合わせて武道館を造ろうということで補助金の申請をしたわけですね。申請先は武道館の方は体育局で、屋内体育館の方は教育助成局なんです。局が違うと補助金の申請時期から決定時期まで全然違いまして、一方の補助金がもらえて片方がもらえないとなると体育館が建てられなくなるので、申請したその町はどうしたかというと文部省の中を飛び回って調整して歩いて、ようやく両方もらえたというケースがあるんです。この事例集が発売されたあともひどい話で、これを文部省が調べたんですね、こんなことを言うのはどこの町かと。その108煩悩事例集にはみんなA町、B町としか書いていないんですが、そういうケースは調べれば分かりますよね。それで文部省からそのあと相当嫌がらせされたというケースもあって、その6団体でまとまってそうやっても、なおかつ中央省庁のそういう体質というのはあるわけです。
 ですから今回の地方分権に関連した法案はまとまって通常国会に出てまいりますので、そのときが大変大事な勝負だというように思っています。ですからいまは自治労の自治研究所と相談しながら、自治基本法などを含めまして対案を提出しようとしております。

〈市民へ、そして市場へ〉
 次に市民へということについてお話します。一言で市民事業と言いましても何をもって市民事業とするかというのは、例えばアメリカの場合は各州によって違いまして、宗教団体の行なっている医療活動や教育活動などもNPOの中に入れて、雇用や経済効果にカウントされている面もあります。10年くらい前の数字ですが、アメリカのGNPの中でNPO事業のウエイトは15%、雇用の面でも10%というように、雇用や経済的な面でもウエイトを高めています。
 日本でもこの種の活動がこれから益々盛んになっていくだろうというように思いますし、NPO法案も必ずしも充分ではない形ではありましたが、我々の意向を入れて修正されて通りました。あと活動における税について、どういう扱いをしていくのかという問題などがこの関連では残っております。
 それから市場へということでは、今回金融問題を通じて大蔵省の情報独占が改めて明らかになったわけです。情報開示をしないで、そして裏で問題の処理をしようとする。拓銀の場合も1994年8月の大蔵検査で2兆数千億円の不良債権があるというのがはっきりしていたんです。そのときに拓銀が公表していた自己査定の不良債権というのは確か5千億円前後だったと思います。94年から破綻する97年まで大蔵省は何をやったかというと、裏で道銀との合併交渉をやっていたんですね。しかしこの話が潰れた瞬間にみんなが預金を引き上げるというようなこともあり、短期市場で資金手当てがつかなくて破綻ということになったわけです。
 梶山静六さんや加藤紘一さんなどが「おれも知らなかった」と言っているわけで、ちょっと信じ難いことなんですが、もしこれが本当だとすれば、では一体誰がこういう大事なことの情報を掌握していたのかということになるわけです。本当に一部の官僚だけが、自分たちで何でもできるという非常に思い上がった考え方で情報を独占し、裏で処理をするというようなことでやった結果が今日の事態を招いたとするならば、やっぱり護送船団方式はやめて、市場にある程度任せるようにして、その代わり国は検査をしっかりやるべきだと考えております。いま金融監督庁の検査が時間がかかってもたついているのは、やっぱり専門家が少ないということが理由なんです。アメリカでは検査の専門家が金融問題だけでも5千人くらいいる。それから国会直属のGAOという、いわば国会の持っている会計検査院のような仕事をしている人たちでも5千人くらいいるということですから、先ほどいったような道路の設計図面を見てチェックするような仕事ではなくて、しっかり検査をするところには人を充分配置して、ある程度は市場に委ねることがやはり大事だろうというように思っています。
 行財政改革といいますと、人によって様々な角度から物を言われるわけですから、いろんな点があると思います。私の場合、基本的にはやはり国民主権といいますか、国民の政治参加、国民の行政・財政に対するコントロールがどのようになされていくのかいう観点からと、先ほどいいました公的セクター、民間セクター、市民セクターでの役割分担をし、それぞれが責任を果たしていくという枠組みを考える上で、行財政改革というのは大変大事な課題であり、そういう視点から国民にとって大事ではないかと考えています。

〈タテ社会からネットワーク型の地域社会へ〉
 旧民主党から新民主党になって整理されていない点はまだ若干あります。旧民主党のときは『市民が主役』をキーワードにしまして、いま言いました市民セクターの役割を高めていくことを活動のひとつにしてきました。現在は市民の参加決定領域を拡大するということで、そういう意味での地方主権というか地方分権を進めること。それからもうひとつは、日本の社会というのは非常にタテ社会になっていますので、その集団的同質的なタテ社会からネットワーク型のヨコ社会に変えていこうではないかということ目指しています。特にこれからの高齢者時代、これからのというかもうすでにやってきてますが、この高齢者時代に向けた医療や福祉は地域で考えざるを得ないわけですね。そうすると地域の中でそういう意味でのネットワーク、地域の中でも公的セクター、民間セクター、市民セクターがどういう役割を果たしていくのかということが大きなテーマになるわけです。
 例えば「神奈川ネットワーク」という、私ども民主党と支持協力関係を結んでいる女性だけのローカルパーティーがあります。一般的にワーカーズと呼ばれているこういうグループの活動は札幌にもありまして、そこには大変たくさんのスタッフがおられます。そういうグループが活動している地域では、例えば役所や自治体が提供するホームヘルプサービスと、ワーカーズが提供するサービスがあり、サービスを受ける側はそれぞれ自分の方でうまく組み合わせて受けることができる。またそういう地域では公的セクターと市民セクターが協力していかなければいけませんし、例えば入浴や食事のサービスなども一般の民間セクターの仕事として相当出てくるでしょう。あるいは民間の生命保険の中の介護保険をこれから活用していくことになるでしょう。そうなりますと、やはり地域の中でネットワークを組まなければいけない。つまりその役割分担と、そのサービスをどこが上手くコーディネートするかということが問題になりますので、市民事業のウエイトはこれからますます高まっていくだろうと私どもも考えております。

〈一人ひとりの顔が見える社会を求めて〉
 そういう地域における福祉などのひとつの形、姿、あるいは全国的に行われている例えば町おこし運動というようなものも、私はひとつの政治参加の運動だと思っています。今までの日本は、例えば自分の住んでいる町をどうやって良くするかということで、地区労に帰属しているとか商工会に帰属しているとか農協に帰属しているとか、帰属しているところで方針が決められてそれに従うというタテ社会の構造だったわけですね。ところが町おこし運動というのはそういう帰属じゃなくて、地域に住んでいる者としてのネットワークが基盤なんですね。ですからこれはもうまさに政治参加の運動でして、町おこし運動というのが広がっていきますと必ず政治の壁にぶつかりますから、市長を代えようとか町長を代えようという運動にすぐなっていくわけです。
 最近の首長選挙では、例えば自民党からそれこそ民主党、社民党まで含めて共同推薦し、あるいは商工会や地区労、建設業協会など団体全部の推薦を受けたような現職の市長さんや町長さんが負けて、新しくポッと出たような人たちが当選するということがありますが、実は突然ポッと出て当選しているのではなくて、地域の中にそういうタテ社会と違ういわば横の連携が生まれているからなんですね。その横の連携というのは、地域における町おこし運動や高齢者地域福祉など全く違う分野ですけれども、ネットワークという共通性で、日本のタテ社会に対して非常に大きな変化をもたらしていけるのではないかと期待しているところです。
 特に自民党が政権を失って野党になったときは、まさにこのタテ社会を崩してヨコ社会に転換する非常に大きなチャンスだったわけです。各業界団体も自民党は野党になったからもう推薦するのはやめようという雰囲気になりました。そうやってだんだんみんなが言い出したときに村山政権が誕生しまして、その過程を通じて自民党が政権に復帰してしまった、そしてタテ社会が復活し、しかも前よりも非常に厳しくなった。しかし今度の参議院選挙に見られますように、自民党の拠点でありました商店街も自民離れを示し始めていますので、これからの日本の政治改革の方向性というのは『第三の道』であり、その中における市民セクターというものをどのように強めていくのかということであり、同時に地方に権限をもっと移していくということがどれほど実現できるのかということになってくるのではないかと思います。そうして集団的同質的な日本の社会から、一人ひとりの顔が見える社会へという変化を私どもは将来の日本の姿として求めていきたいと、このように思っております。

〈地域活性のポイントは町のコンセプト〉
 札幌に期待することということですが、札幌だけではなくて、地域全体についてお話したいと思います。
 地域の持っているパワーというのは、もちろん経済も大きな要素ですけれども、その地域の文化や社会の姿など、その地域ならではのライフスタイルというような総合的なパワーというものがこれから非常に求められると思うんです。ですからこれからの町づくりというのは、町のコンセプトをどうするかということが重要であります。例えば高齢者や障害者も住みやすい町であるとか、子供を育てやすいところであるとか、あるいは企業にとって活動しやすいところであるとか、それぞれあると思うんですが、そういう町のコンセプトに沿った地域づくりというのが、充分ではないにせよ地方にかなりの権限が移されてくる中で、やはり重要なポイントになってくるのではないかと思っています。
 欧米などでは、こういう地域の町づくりをどうするかというときに建築の設計者グループがメインになっているんです。そして建てる前に充分に地域全体のコンセプトを考えて、その町に合った建て方、配置をするということなんです。私は日本のいくつかの設計者グループと付き合いがあるんですが、その人たちも欧米のようにしたいけれども、なかなかそうはならないと話しています。例えばある町が特別養護老人ホームを造るので、それを請け負った建設会社から設計を頼まれて現地に行ってみたら、何でこんなところに特養を造るのかというような場所だったということが結構あるというんです。彼ら建築の設計事務所の人たちとしては、建てる前から地域の人といろいろ話をして町全体のコンセプトを考えた上で、建物の配置やデザイン、機能を設計したいと思っているんですね。
 また情報や交通のネットワークというのは新しい時代を迎えていますから、東京でなければ情報が取れないということではなくなっているわけです。今までは会社の本社機能を東京に置かなければ生きた情報が取れないということだったわけですが、情報ネットワークの普及と物価の安さから、外資系企業などはもうだいぶ東京から撤退して、アジアの他の地域に移っています。つまり情報の取り方をうまくすれば、どこに居たって仕事ができるわけでして、そういうところに着目して業績を伸ばしている企業もたくさんあるわけです。例えば有名なケースですが、音更町の廃校になった学校に庭園・造園の企業が丸ごと移ってきてそこを仕事場にしました。そして情報はいくらでも瞬時に取れるようにしましたし、近くには帯広空港がありますのでいつでもあちこち行けるわけです。そういうことからいいますと、北海道は非常に良い環境の中で情報や交通の基盤整備が進んできていますから、これを活かそうとすれば新しいことがいくらでも生まれてくるのではないでしょうか。
 それからヨーロッパなどもそうですが、非常にボーダーレス時代になってきていますので、国と国という昔の形にとらわれるよりも、都市と都市、地域と地域というつながりの多様なネットワークができつつあります。今までも姉妹都市という形はありますが、これからの北海道も、そして札幌などもそういうボーダーレスなネットワークを世界に向けて広げれば、また別な形の様々なネットワークができるのではないかというように思っています。

〈我が街札幌へのエール〉
 昨年ですが、ススキノ観光協会からある相談を受けました。どういう相談かといいますと、ススキノ観光協会とその地域周辺には、狸小路があって地下街商店街があって、一番街から四番街までありますが、お互いに話し合ったことが一度もなく、バラバラなんだそうです。一番街なら一番街でどうするかという再開発事業はあるけども、他の商店街とリンクしてという面としての活動が全然ないんですね。そこでこの札幌の中心の札幌駅から大通公園、ススキノまで含めた界隈をどうしたらいいかということで、ちょっと私が声を掛けましてみんなに集まってもらったんです。そしてフリーディスカッションを何度かやったんですが、いろんな意見が出てきました。大変面白い意見も出てきました。
 私が知事をしていたときに景観アドバイザーという制度をつくりまして、この人たちと町の中を歩いて見ながら、町の見栄えばかりではなくて、機能も含めてどうしたらいいのかということをやったことがあります。例えば札幌の顔であります大通公園一帯を、冬にブラブラと散歩できるかといったらツルツル滑ってとてもそうはいかない。では一体どうしたらいいのかなどを話し合って都市計画に活かしていました。いまは全国どの町の中心街も寂れてきていますが、中心街にまた人が集まるような、あるいは商店街に人が集まるような、新しい方向性をしっかり考えることが札幌にとっても大事なポイントではないかというように思っております。
 ススキノ商店街の話の続きですが、そのうちに景気がだんだん悪くなりまして、本格的に再開発をやるとやっぱり1千万円か2千万円かかるものですから、ちょっといまは中座しているところなんです。
 札幌に期待することということで思い出したものですからちょっとお話申し上げましたけれども、やはり町としてのコンセプトをどうするかということと、いま時代が非常に変化してボーダーレスになり、情報化が進む中で、それをどのように活用していくのかということ、それから札幌の中心街をどう甦らせるのかということが大変大事な課題ではないでしょうか。答えにはなりませんが、問題提起致したいと思います。

〈環境重視のドイツ〉
 話を国政問題に戻します。私ども民主党のめざす社会の姿というのは、タテ社会ではなくネットワーク型のヨコ社会だと申し上げましたけれども、そのなかでも経済はマイナス成長というわけにいきませんから、どうしても1%か2%の成長率が必要なんだろうと思います。しかしこれからの経済成長には制約要件が出てくることを考えなければなりません。地球環境の問題や、日本では少子高齢化がすごいスピードで進んでいるという問題などがあり、この中で日本の経済をどうしたらいいのか考えていかなければなりません。
 ゼロ・エミッションということをひとつの問題としますと、それに向かって政策を誘導していく。例えばドイツにはビン政策というのがあります。ビンといえば日本ではビールビンがリサイクルされていますが、他の色のついたビンは回収しても使うのは難しいんですね。ドイツでは何にでも無色の中ビンを使ってもらうために、そのビンにはあまり税金をかけないで、色つきのビンには重い課税をして、できるだけ回収して使うという経済社会の仕組みをつくろうとしているんですね。このようにドイツなどは先を見ていまして、情報通信の次はやはり環境問題ということで、環境にウエイトをおいた経済社会のあり方を追求しています。日本でもそういうようなグローバルな視点、観点に立って日本の経済をどうしていくのかということをしっかりやらなければいけないところにきていると思っております。

〈着々と進む民主党の政権準備〉
 細川政権もそうですし、村山政権もそうですけれども、事前に政策準備をして政権についたわけではない。つまりこれをやりたいという政策を持って、政権についた瞬間にこれをやりますと国民に公表したわけではありません。村山政権も例えば水俣病の解決や被爆者援護法案をやりますよとテーマを掲げてやったならば評価も違ったんだろうと思います。すぐできることとできないことがありますが、私どもは政権を担ったときのための政策整備をしようということで、現在いくつものグループに分かれていろんな準備をしています。その中で中長期的にやらなければいけないものと、短期的にやるものとに分けまして、いつ政権が転がり込んできてもオタオタしないように危機管理も含めて準備をしているところです。同時に、日本や世界の将来ヴィジョンも示さなければいけないと思っておりますので、社会のあり方、経済のあり方、あるいは国際的な協力と平和創造についてのあり方など、党内外でいろいろと議論しているところです。
 もし何かご質問があればお答え致したいというように思いますが、一応、私の話をこの程度で終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

 講演終了