横 路 孝 弘  国 政 報 告 会
1999.5.29


 今日はお休みのところ、こうしてたくさんの皆様にお集まり頂きましたことを心から感謝申し上げたいと思います。
 この4月の統一地方選挙では札幌市内各区で皆様から大変ご支援を頂きました。私の地元中央区の岩木市会議員、そして南区の中野市会議員候補の二人を落としてしまいまして、申し訳なく思っております。
 今日は国会で問題になっている当面の課題について、例えばガイドライン問題、それから昨日強行採決されましたいわゆる盗聴問題、そして経済問題や年金、介護の問題など、ひと通りいろんなお話を申し上げたいと思っております。


○わかりやすい政策をめざす研究会の立ち上げ

 私ども民主党は4つの会派が一緒になってスタートしてからちょうど1年が立ちました。スタートしてすぐ参議院選挙がございまして、その後は夏休みなしで金融国会、それが終わりましてから党大会を開催し、予算委員会、ガイドライン国会、統一地方選挙と、いわば一気に駆け抜けてきたという感じがいたします。衆議院選挙を前にして、問題を整理しなければいけないときに来ていると思っております。
 スタートするときに民主党議員全員で一応の約束事をしてスタートしたわけですが、具体的な問題の対応に追われているうちに、わかりやすくそして政策をしっかりと皆さんに提起していく活動が弱くなってしまいました。そこをこれから克服していかなければなりません。
 また、この国は現在ある意味で大変な危機に直面しているわけです。当面の大きな問題は雇用不安ですとか、年金や介護といった将来の不安ということです。そのためにやらなければいけない課題というのはたくさんあるわけですが、私ども民主党は何を考え、そして自自連立あるいは自自公連立の政策とどこがどう違うのか、もっとはっきりさせなくてはいけない。そこで私が日頃考えておりますテーマを中心として、党の中で議論し提案していくことを目的とした『民主プラス21』という研究会がスタートしたところでございます。
 いまいろんな問題がわっと出てきて大変難しいところでありますけれども、しかし同時に民主党という政党がいまの自民党政権に取って代わる、そのための具体的な方向性が必要でございますので、そういうことを今の日本の現状と併せて今日はお話しをさせて頂きたいと思っております。


○全く効果のない政府の需要喚起策

 まず最初に経済の問題です。去年4月に橋本内閣が経済対策として17兆円の経済対策予算を計上してから今日まで、経済特別対策として120兆円以上のお金を投入しております。120兆円のお金を投入して、1年前と比べて経済は良くなったのかというとむしろ厳しさが進行しています。先日発表された一番新しいデータでは失業率が4.8%、およそ340万人が失業しています。そして大企業のリストラという名のもとに従業員が解雇されるということで、これからも失業者が増えていくという状況にあるわけであります。
 120兆円ものお金を投入して、どうして景気が良くならないのか。皆さんもご承知のように、バブルのときにいろんな企業が一生懸命に設備投資をして、モノを作る能力が非常に拡大しました。サービス業ではスーパーや大規模小売店が店舗拡大をしました。それに伴って、付随する産業が拡大したのです。そのために民間の、あるいは政府の金融機関からお金を借りて投資した、このような状態が広まってしまったわけです。
 バブルが崩壊してもう10年立っているのですが、この10年間に政府は何とか需要をつくろうと、今までも公共事業だけで100兆円以上を投資してきた、これは先ほどの120兆円とは別にです。ですから地方自治体の財政赤字の3分の2はバブルが崩壊した後の景気対策のために投入された、主として公共事業予算によって出来ているものだと言っていいわけです。
 ところがこれだけの公共事業投資をして、例えば建設関係の雇用は増えているかというと、19ヶ月連続で雇用は減ってきているのです。お金を使っても雇用は減っている。それから公共事業投資をすると波及していくといわれている建設関連機械の受注も減っていまして、5年前と比べると半分に減っているのです。ですから需要喚起策をいくらやっても需要は上がらないということになってきていまして、最近、政府は逆に、設備は廃棄する、拡大した生産能力を縮小する、拡大した店舗を減らすことを支援するという政策を出し、それを各企業が取るようになってきています。


○安心感・信頼感のある福祉政府を

 ひとつ申し上げたいのは、いくら需要喚起策を取っても消費はさっぱり伸びませんし、設備投資も起きない。それは需給ギャップがあって生産力が拡大しすぎているからで、新しい設備投資といってもそう簡単に新規事業に代わっていくということにはなりませんから、投資が起きるわけがないのです。
 それから消費も低迷しています。いま出ているデータで見たところ、地域振興券もほとんど経済効果は無かったという結論を出さざるを得ない状況です。皆さんが考えていたように、生活に必要なものを買うときに券を使って、浮いた分のお金は貯金に回したということです。
 最近は勤労者世代、それから所得の低い人々の、例えば年収200万円以下の人でも、貯蓄率が上がっています。これはなぜかといいますと、やはり将来への不安があるからなんですね。結局、いくら需要喚起の政策で公共事業を出しても、規制緩和をして市場は自由ですから誰でも入ってきて商売しなさいといっても、国民の社会に対する安心感や信頼感が無ければ市場は動いていかないということを示しているわけです。ですから需要をつくり上げるのではなく、むしろ需要を阻害している要因をしっかりと取り除くことが重要なんです。
 厚生省は年金の改革案を出しましたけれども、これは一言で言えば、負担は増えますよ、給付は減りますよという政策です。安心感のある年金政策を発表し、それがしっかりと定着しない限り、政府の今の需要喚起策では拡大していかないのです。
 ですからいま一番大事なことは何かというと、雇用問題や年金、介護、医療といったことの将来の不安を解消する政策、あるいはそういう福祉政府をしっかりつくることなのです。
 いま私は『福祉政府』ということを申し上げましたが、これは全てを税金でやる大きい政府でなくてもできるのです。この話はあとでいたしますけれども、小さい政府だがしっかりとした政策をベースにして、充実した福祉制度をつくることができる。そのためにやらなければいけない改革はもちろんあります。それは年金改革であり医療改革であり公共事業改革など、いくつかの改革をしっかり行なっていかなくてはいけないと思っています。
 まずそういう意味では、今までの政府の公共事業を中心とした需要喚起策というのはもう限界であるから、私どもはやはり安心感、信頼感のある福祉政府に切り替えていくことが第一だと思います。


○心配されるアメリカのバブル好景気


 小渕さんは最近、大企業は過剰債務で過剰設備で過剰雇用だと言っています。経済評論家の人たちがテレビで同じようなことを言っていますよね。非常にけしからんと思うのは、皆さんもそう思うでしょうが、設備投資は自分の責任で銀行からお金を借りてやったのに、過剰設備だから廃棄すれば税制面などで優遇しますよと言っている点です。
 いま製造業の分野で、設備廃棄すると税制面で政府が面倒を見てほしい。その上、設備廃棄をした工場の跡地を国に税金で買ってくれという要求も一部から出ているわけです。これはさすがに経済界の中からもやり過ぎではないかという声が出ていますが、当たり前ですよね。こういう問題は製造業だけの話ではなく、他のサービス業も含めてたくさんの課題を抱えているわけなのです。
 それから過剰債務について、企業の中には銀行からの借金をチャラにしてもらって、その上でいろんな入札でダンピングをやったりして、まじめに借金を返していこうという企業とトラブルが起きたりなど、いろんな問題が起きております。
 政府が今までやってきたことは、ひとつは需要をつくることと、もうひとつはいま言ったように設備廃棄などで供給サイドの力を強めるという政策です。例えば今年の法人税引下げと高額所得者の税の引下げなどです。これはアメリカの政策を真似してやったわけですが、これの効果はほとんど無いだろうといわれています。今年は標準世帯、つまり夫婦と子供ふたりの4人世帯で、年収780万円以下の方はむしろ増税になって、年収が約800万円以上の方は減税になりますよという話なのです。
 アメリカではそういう政策をレーガン大統領のときに行ないました。アメリカはいまでもそうですが、消費過剰の国で貯蓄がさっぱり無い。最近のアメリカは非常に異常でして、借金をして株を買うということをみんながやっています。借金をして株を買う。だからバブルがはじけたらこれはもう大変なことになります。それに年金なども401Kという形で自己運用していて、老後もそれに期待している。今は株が上がっているから良いですけれども、バブルが崩壊したり、その崩壊の仕方によっては本当に深刻な問題が発生するのではないかと思います。
 アメリカの場合は高額所得者の税を下げ、その分貯蓄や投資に回そうという目的です。ところが日本の場合、高額所得者に減税をしても貯蓄に回っては困るわけで、ではきちんと投資に回るのかというと、いま言ったように、設備過剰で廃棄をしようというしているのですから、投資に回るわけではない。つまり経済の構図・構造と不況の原因が違うわけですから、同じことをやってもうまくいくわけがありません。


○政府の無計画な120兆円バラ撒き

 そういう中で国民が日本の社会をどう思っているかというと、何となく平等な社会なのだ、世界に比べて資産の格差も所得の格差もない国だというイメージ。そして日本は福祉国家なのだというイメージがあったと思いますが、最近エコノミスト賞をもらった京都大学の橘木先生が次のように反論されています。「日本は所得も資産の面でも不平等国家になっている。決して福祉国家ではない、ヨーロッパではなくむしろアメリカに似ている」。このような意見を『日本の経済の格差』という岩波新書で数字で示しています。
 どうもこれは事実のようです。つまり資産格差が開いてきて、所得の格差もかなり大きくなってきた。前にも皆さんに申し上げたかもしれませんけれども、首都圏に住む人のおよそ5万人が240兆円の貯蓄を持っているといわれています。日本全体の個人資産が1200兆円ですから、そのうちの4分の1近くをたかだか5万人が所有している。1人約50億円の資産を持っている計算になります。主に首都圏に農地を持っておられた方が中心だと分析されていますけれども、そういう意味でも資産が非常に偏っています。
 ですから高齢者の方の貯蓄だとか勤労世帯の平均貯蓄などの数字を聞いて、ずいぶん自分たちと違うなという思いをされると思いますが、それは一握りの人たちが物凄くたくさん資産を持っているから平均値が高くなるわけで、ほとんどの人たちは平均値よりも低くなってしまう。実態は、例えば高齢者の方で年金収入だけというのは男性の場合だいたい5割くらい、女性の一人暮しの方は7割くらいでして、年収200万円以下という方が高齢者の世帯では40%を占めています。そこにさらに将来への不安が重なっているわけでありますから、やはりお金を使わず出来るだけセーブするということになってしまいます。
 日本の国民総生産500兆円のうち、300兆円が私たち一人一人が物を買ったり食事をしたりする個人消費であり、それくらい経済のウエイトを占めているわけですから、消費を10%控えれば30兆円も需要が減ってしまうわけで、大変影響が大きいわけです。
 そんな意味で日本の不況にはいろんな要素・要因がありますけれども、政府は具体的な計画も無く、ただ120兆円をバラ撒いた。こんなにお金をバラ撒いているわけですから、首相の支持率は上がっているのです。本来の改革というのは何もやっていませんし、痛いと言っている人がいるわけでもなく、ただ庶民だけが苦しめられているという感じでございますから、まあ何となく小渕首相はいい人でないかというようですが、実は何の改革にも手をつけないで、無いお金120兆円をバラ撒いています。
 これはいずれどこかで清算をしなければなりません。今年の末には国や自治体などの借金が600兆円になります。今年の予算81兆円のうち30兆円が借金ですが、来年度予算もまたさらに同じようにやっていかなければなりません。これは一体どうなるのかということになるわけでございまして、やはり思い切った歳出のカットや改革をやっていかなければいけないと思います。
 今年2月に、主に企業後援会の皆様方に声を掛けて行なったシンポジウムに経済評論家の田中直毅さんをお招きしたのですが、田中さんは「公共事業予算は5年間で半減くらいしなければいけない」と言われました。それはつまり、国家財政の面からもそういうことに手をつけざるを得ない危険な状態だということです。しかし政府はそういう重要なところに手をつけないで、選挙になったら補正予算を組む、しかもまた公共事業予算という形になっておりまして、これからの日本の社会を想定した形になっていないことを本当に残念に思っています。


○介護保険制度は予定通り導入すべき

 介護問題についてお話ししたいと思います。来年4月から公的介護保険制度が導入される予定ですが、政府の中でこの制度をやめようかどうしようかという話が今になって一気に出ています。いろいろ問題があるのは事実なのですが、どうも政府は在宅介護などのサービスの提供が間に合わないからやめてしまおうと考えているようです。私たち民主党は、この保険制度を導入することによって介護の体制を社会がしっかり取れるように、みんなで努力して積み重ねていかなくてはいけないというように思っています。
 市町村の中で「大変だ」と言っているところと、「やりましょう」と言っているところの差は何かといいますと、早くから自主的に準備をしてきたかどうかという点です。介護保険の実施は3年くらい前から決まっていたので、ちゃんと準備をしてくれば良かったのです。ところが国の具体的な方針が出ていないからといって、それを待っていた市町村はあまり体制の準備をしていませんから、今になって「大変だ」と言ってバタバタしているのです。
 私は、自分たちの責任で物事を決めていくというこれからの地方分権のカタチを考えてみましても、この介護制度はやはり導入して、各自治体が住民の意見を取り入れながら改善していくべきだと考えています。ですから政府が今になって延期しようとしているのは非常にけしからんと思っています。
 もちろん問題はあります。その問題は私どもが国のレベル、道のレベル、市のレベルで皆さん方と一緒に解決をしていかなければいけないと思っております。
 各自治体ではまもなく要介護認定の申請作業が始まり、いよいよ保険制度スタートとなりますが、まだ残っている重要な課題があります。それは、ひとつは在宅介護サービスに向けた準備が遅れているということです。厚生省の『新ゴールドプラン』というのがありまして、それに沿って例えばホームヘルパーを何人養成するか、ショートステイを何人分用意したらいいかという計画を立てて、それを目標に整備を進めてきました。
 新ゴールドプランといっても、在宅サービスが必要な人全員へのサービス提供を目標にしているわけではなく、目標はその半分以下、40%でした。ところが現状の老人福祉サービスや介護専門員などのスタッフ数から分析すると、現状では40%目標の3割程度にとどまってしまっています。つまり要介護者の10数%にしかサービスを提供できない。数字そのものがそれくらいに過ぎないということを、政府も国会の議論の中で認めているわけです。
 つまり保険料を払って、要介護の認定や審査を受けて「あなたの要介護度はこうですよ、ですからサービスはこれですよ」と言われたときに、そのサービスをする体制が人の面でも施設の面でも全く足りない。特に在宅介護の場合はホームヘルパーがいて初めて成り立つのに、現状ではとても足りないということがはっきりしています。
 ですからまず、介護専門員やホームヘルパーなどの養成が非常に急がれます。失業者が増加する中、雇用を増やす意味でも、そういうホームヘルパーの養成を急いで進める、あるいは介護プランをつくるケアマネジャーの資格試験の回数を増やして、もっと多くの人々が資格を取れるように制度や仕組みを変えたらいいのではないでしょうか。これらをやるだけでも介護人員は充実します。
 そういう前向きな検討もせず、やめてしまおうという議論が始まっているのは非常にけしからんことだと思っています。それが問題のひとつです。


○介護保険の問題点…療養型病床群、低所得者の自己負担、制度移行による格差

 もうひとつの問題は、施設サービスにおける療養型病床群についてです。
 病院での入院治療はもう終わっていて、本当なら自宅に戻ってときどき通院するか専門施設でリハビリケアをするだけで良いのですが、通院できる病院や施設が近くに無いのでそのまま病院にいるという『社会的入院』患者が、介護制度が始まって体制が整いますと自宅や施設に移ることになります。そうすると、病院にしてみれば患者さんが減るだけ収入も減ってしまうので、病院も介護サービスしますということで、医師会と厚生省との話し合いで療養型病床群というのが特別養護老人ホームと老人保健施設と同様に施設サービスのひとつになりました。実はここが費用としては一番高いのです。
 この療養型病床群というのは一般病院と異なり介護ケアが中心で、例えばリハビリがしっかり出来るリハビリルームや、車椅子の人も食事が出来るように通りやすくて床の段差を無くした食堂、会話したりゆっくりくつろげる談話室、大型の風呂場などの設置が求められています。
 それから一般病院は特別養護老人ホームと比べて患者一人あたりのスペースが非常に狭いのです。廊下の幅も狭ければ、一人あたりのスペースも狭い。だから病院の全体、もしくは一部を療養型病床群に変えて認可を受けるためには、廊下の幅を広げたり、一人あたりの面積を広げて介護する体制を整えなければなりません。
 しかし厚生省は、風呂でなくてもシャワーで良いとか、談話室といっても廊下の端にそれらしい空間がちょこっとあれば良いとか、不充分な療養型病床群でも暫定的な移行過程であるという理由で認定しようと考えたわけです。私に言わせればこれは相当なインチキでして、これならば特別養護老人ホームのほうがはるかに良いし、しかもこんな療養型病床群でも料金が一番高いということならば、やはりこれは認めてはならないと思います。
 人口に占める要介護の人数が多かったり、施設サービスが充実している市町村はどうしても保険料が高くなってしまいます。そういう状況の中で、充実した介護サービスを提供するという本来の目的から外れたような療養型病床群が出来ているというのが非常に大きな問題点です。
 それから、介護サービスを受けるときは自己負担が伴います。ですから低所得者の人は今まで以上に生活が苦しくなってしまうのではないでしょうか。まず保険料は65歳以上の方ですと3000円以上になるか3500円になるか4000円なのか、とにかく各市町村のサービスに応じた保険料を払います。それから介護サービスを要介護度に応じて受けます。その受けたサービスの費用の1割を負担することになりますから、例えば月350,000円のサービスを受ければその1割の35,000円を自己負担することになります。施設に入れば食事代も負担しなければなりませんから、今までよりも自己負担が非常に増えるわけです。
 所得の少ない、例えば老齢福祉年金の受給者の方などは大変困ります。今のところ、所得の少ない方が高額の介護サービスを受けた場合の自己負担の上限は定めていますが、その上限でもかなり高いので、そこをどうするかという問題がまだ残っています。私どもとしては、政府がバックアップするような仕組みをつくったり、所得区分をもう少し細かく分けて自己負担を低く抑えるようにしたり、しっかり検討しなければいけないと考えております。
 それから介護保険制度が始まると、今まで利用していた介護サービスよりも少なくなってしまう、もしくはサービスが全く受けられなくなってしまうという人が出てくる可能性があります。今までの調査ですと、例えば特別養護老人ホームに入っている方の3%から5%は自立可能という認定を受けて自宅に戻される、その上在宅介護サービスも受けられなくなる可能性があるのです。
 そういった制度開始時における問題や、いまサービスを受けている人が新制度になった途端に保険料は取られるがサービスは受けられないということが生ずる危険性など、いま私が申し上げた主な問題点4つが今もなお解決されていない非常に大きな問題だというように思っています。
 政府の中ではやめようか延期しようか混乱していますが、せっかくみんなでここまで進めてきたことですから、やりながら問題を解決していくしかないと思っています。保険ではなく税制でという議論もありますが、いま国にお金が無い中でいきなり税に切り替えれば、将来相当な消費税アップにつながっていくこともあります。保険というのは自分たちの納めたお金が間違いなくそこに使われるということですので、何とかこの保険制度を良いものにして活用していこうではないかと思っております。


○基本は安心感…民主党の介護・年金・医療政策

 そこで私ども民主党としては、まず在宅介護の基盤である施設の整備やホームヘルパーなどの人員の充実を数値目標を定めて進めていきます。これは国が従来と同じように税金で負担してその基盤をつくるべきです。
 それから先ほど申し上げました療養型病床群をしっかりした特別養護老人ホームなどの施設に内容の充実を伴って転換していくべきだというように思っております。
 また高額サービスの費用負担も見直しが必要ですし、特に地方においては介護条例の制定に合わせて、地域における給食や配送などのいろんなサービス、あるいは予防介護や健康診断といったことと介護サービスとの組み合わせを充実していかなくてはなりませんので、高齢者福祉総合条例といったものを住民主体の地域運動で制定させたい。介護制度はまさに自分たちが判断してつくっていくものだという趣旨を生かすためにも、政府が策定したマニュアルに従うだけではなく、その地域に制度を合わせる、例えば札幌なら札幌の介護の現状に基づいた地域条例を制定して介護制度を上手に運用していくべきだと考えておりまして、いま私ども民主党では女性議員や地方議員を含めてその議論を始めようと思っています。それも民主党本部の中だけで議論するのではなく、札幌なら民主党札幌と市民運動をやっている方とが一緒になって、そういう新しい条例制定を進めていければと思っております。
 そういった介護についての安心感といいますか、やるべき改革はこれから始めるわけですが、しっかり前に進めていくことも非常に大事な安心感のひとつになると思います。
 また年金の問題もございます。年金の抜本的な改革はまだこれからになるわけですが、皆さんもご承知のように、国民年金では3分の1の方が未納になっているのです。ですから年金の一番基本のところがすでに空洞化してしまっている。これではどうしようもない。それからこの国民年金は給付額も生活保護と比べてはるかに低いのです。ですからまずこの国民年金に、ある程度公的な保証といいますかバックアップがどうしても必要ではないかと思っています。
 いま厚生年金は55%の保証ですが、これを政府全体として50%に下げるというのが政府の年金の改革案になっています。その改革案というのは、@いわゆる報酬比例部分と厚生年金の部分を5%引き下げる、A受給開始年齢を60歳から65歳に引き上げる、B65歳以上の受給者には賃金スライド制を停止して物価スライドは残す、C手取り年収の55%の給付水準を全体としてさらに5%引き下げる、というような内容になっています。
 しかしこの案はかなり問題があります。例えば年金の積み立ては現在約150兆円ありますが、政府は2020年までにこれを400兆円にしようと言っています。しかしそんなに積み立てを持っている国はありません。何のためにそんなに積み立てるのか、本当に必要なのか大変疑問です。それよりも年齢構成が落ち着くまでの過渡期をどうするかという課題があります。この点では、落ち着くときを目標にこの積立金をうまく取り崩しながらやっていきますと、負担を上げて給付を減らすということをしなくてもほぼ現状のままで済みます。私が先週から始めた研究会ではそれを議題に上げようと思っています。
 年金についての専門家の意見は一人一人違いますが、基本はやはり安心感です。生命保険などによる個人の自助努力も必要ですが、やはり公的な年金である国民年金の3分の1が空洞化している点を解消しなければいけないでしょう。基本では税負担を取り入れながら、先ほど説明したように年金の積立金を使って整理していく。給付水準は落とさないということを基本にしてまとめていかなければ、安心感、あるいは信頼感というものはなかなか生まれてこないと思います。国民が生活や将来への安心感を取り戻さなければ、政府があれこれやっても需要は伸びないのではないかと考えております。
 それから医療改革については前回の国政報告会でも申し上げましたが、日本の医療保険30兆円のうち、4割が検査代と薬代で占めていまして、これが欧米ですとだいたい10%前後になります。10%を切っている国もありますし、10%を上回る国もありますがそんなに高くはありません。日本も欧米並みに、例えば40%を20%にするだけで6兆円が使われなくて済むことになります。
 一方、日本と欧米との医療における違いは医療従事者の数にあります。1ベッドあたりの医療従事者は日本では約0.9人ですが、アメリカではその4倍の約3.6人もいます。それだけ患者を診察したりサポートしたりする医療関係者が多いということです。やはりこれからは福祉や医療といった分野に人を増やしていくことが重要ではないでしょうか。
 またアメリカと日本では救急医療の救命度といいますか、命を救う割合が全く違います。交通事故が起きたとか、心臓発作が起きたというときに、アメリカでは現場にすぐ駆けつけて治療するシステムが整備されています。例えば地方ではドクター・ヘリという、医師がヘリコプターに乗って現場に急行する24時間体制があります。それから事件や事故が多発する都会でも、救急車やパトカーが駆けつける時間は日本よりはるかに早いのです。日本も薬や検査にお金をかけるよりも、命を救う体制にお金をかけるべきです。私ども民主党は、医療に対する信頼とか安心感が生まれてくる改革をしなければならないと思っております。
 いま申し上げましたように、経済の不況を回復させる一番の基本はやはり安心感や信頼感が沸いてくる政策を実現することであり、そのために年金や医療、あるいは公共事業といったところにメスを入れていかなくてはいけないと思っていますし、民主党もそういう政策はもっとわかりやすく打ち出していかないといけない。「民主党の議論や政策はわかりづらい」という声も頂きますので、もっと生活感があふれ安心感の沸く政策を出す民主党にしていきたいと思っています。


○強行採決された盗聴法について

 それから盗聴法案が昨日の法務委員会で強行採決されたわけです。盗聴社会というのはやはり嫌ですよね、密告社会、盗聴社会というのは。
 今年の連休に私は妻と映画を2本見たのですが、1本は「エネミー・オブ・アメリカ」という映画です。これはアメリカの大変面白い娯楽映画ですからぜひ見て頂きたいと思いますが、アメリカのある国会議員が早朝、犬を連れて池の周りをジョギングしていました。そこにアメリカのNSA、これはアメリカの安全保障に対処する国家安全保障会議という組織ですが、そこの幹部が彼を説得しに来るのです。そのとき議会ではプライバシー保護の法律が出ていたのですが、幹部はそれを潰せと説得していたです。その議員は断りました、断ったところでNSAは彼を殺してしまいます。
 そのあと通行人が殺人現場を発見して大騒ぎになり、警察が駆けつけて捜査するのですが、その様子をNSAもそこで見ていました。するとたまたま野鳥の観察家がいまして、飛んでくるカモを撮影するためにその殺人現場のごみ箱の中にビデオカメラをセットしていました。カモがバタバタすると自動的に撮影するようになっていたのです。NSAが隠れて見ていると、ごみ箱の中からカメラを取り出していく人間がいるぞと、それでNSAはその人間を調べるわけです、誰が何をやっていたのか。
 その人は自然愛好者で学者でもあったのですが、帰ってからビデオを見たら国会議員が殺される様子が映っているわけです。一方、テレビでは国会議員が殺されたというニュースが流れている。これは大変だというので、彼はそのテープをダビングして、友達の弁護士のところに届けようといって行く。そしてNSAも彼を追いかけます。追いかけるために衛星を使うのですが、NSA本部にある大きなスクリーンで場所を指示して誘導すると、衛星から彼を写すことが出来る。その男が逃げているのが全部分かってしまうのです。そしてヘリコプターと地上から追い詰めて彼を殺してしまうのですが、彼は殺される前に友達の弁護士の買い物袋にテープをさっと入れていたのです。弁護士は何も知らないで、あとからNSAに追いかけまわされることになるという話なのです。
 最後にドンデン返しがあって非常に面白いのですが、この映画でまずやっていたことは盗聴です。NSAは弁護士の家に忍び込んでカフスボタンやボールペン、時計、靴などあらゆる物に盗聴器を仕掛けたり小型カメラをセットして、彼の発言や行動を全部キャッチしてしまいます。ですから電話機に仕掛けなくても声をキャッチしてしまうのです。そういう盗聴などをして、逃げ回る弁護士のプライバシーを丸裸にしていくのです。またNSAは個人情報を書き換えて、彼のカードを使えなくしてしまったり、銀行の預金をゼロにしてしまったりするのです。


○すべての国民が狙われる盗聴法

 これは映画での話だと思っていました。ですが昨日たまたま読んでいたニューズウィークという雑誌の中に、今のユーゴスラビア空爆とミロシェビッチ大統領に関連して、クリントン大統領がサイバー計画を承認したという記事が出ていました。そのサイバー計画というのは何かというと、ひとつは破壊工作、もうひとつはミロシェビッチ大統領が外国で持っている預金口座に侵入して、預金を全部引き出してしまうということだったのです。こんなことは泥棒だと思いますが。
 ではそれをどのように実行するのかということです。詳しくはニューズウィークを読んで頂きたいと思いますが、銀行は信用が無くなりますから絶対に協力しません。その記事によりますと、誰かがその銀行に口座をつくり、銀行のシステムを綿密に調査してセキュリティーの弱点を見つけて、それからハッカーが暗号を読み解いてシステムに侵入して、最後はミロシェビッチ大統領の持っている預金を全部引き出すのです。このようなことをクリントン大統領がCIAに命じたという記事が出ているのです。
 日本でもこのまま盗聴法案が通れば、犯罪捜査において電話だろうとファックスだろうとEメールだろうと、どこにでも侵入して何でも出来るという社会になってしまう。これはやはり大変恐ろしいと思います。
 今回の盗聴法案は薬物、銃器、集団密航、組織的殺人という4つの犯罪に絞ったといわれていますが、よく見てみると、その犯罪を犯す恐れがあるときも盗聴の対象(事前盗聴)になるのです。「恐れがある」ときも良いのであれば、盗聴範囲は限りなく拡大してしまいます。犯罪が起きてから盗聴するのではなく、犯罪の恐れのある段階で盗聴できますから、そこに例えば弁護士やマスコミとの電話のやり取りがあって、それを怪しいとすればその相手も盗聴して調べることが出来てしまうのです。
 日本でも裁判所の許可を得て盗聴を認めたケースは何件かありますが、公然と盗聴できるようになりますとチェックが出来ない。今までも共産党の幹部宅を裁判所の許可なく盗聴していたということがありましたし、その他にも盗聴の事例はあったのです。
 こういう法案が出てきているということは、今のような情報通信時代であればあるほど、情報を持つものが独占してしまうことになり、国家が権力を非常に強めることになってしまいます。しかも日本には個人情報を保護する体制が全くありません。ですから住民基本台帳番号制の問題も私ども民主党は反対しております。個人情報を保護する包括的な仕組みをつくるのがまず先であって、そうでなければ、本当に国家権力が人を丸裸にしてしまって、そして場合によっては情報を変えてしまうことにもつながりかねません。
 今日の新聞のテレビ欄によりますと、夜9時から『ザ・インターネット』という映画が放送されます。もし見ていただければと思います。これも私は見たことのある映画です。これは個人情報をすり替えるという話で、自分が自分でなくなってしまうということをテーマにした映画でございますので、夜に強い方は見ていただきたいと思いますが、本当にわれわれが知らないところでそういったことが進行していることを、私ども民主党は大いに問題だと位置付け、若い人たちを中心に国民的な運動を展開しようと頑張っております。


○ガイドラインの一人歩きは断固許さない

 それから最後にガイドラインについてもお話したいと思います。
 ガイドラインについては、廃案という考え方と、私ども民主党のように修正という考え方がありました、そこをお話したいと思います。
 ガイドラインというのは、もうすでに日本政府とアメリカ政府との間で出来上がった協定なのです。私たち民主党は「国会審議にかけるべきだ、国会の承認事項にするべきだ」と主張しましたが、政府は国会にかけないで決めてしまいました。そしてこの協定は協定として動いてしまいます、今回のガイドライン関連法と直接的には関係なくです。
 そのガイドラインには3つの内容がありまして、@普段からの協力、A周辺事態の協力、B日本有事の協力です。今回の法律はその中の周辺事態の協力において、そのうちの後方地域支援活動と捜索救難活動の2つについて法律的な根拠をつくるというのが目的だった法律なのです。その他にも自治体と民間の協力というのも法律の中でうたわれていますが、これは政府答弁では強制力はないとなっています。断っても処罰することはありませんということですから、法律的にいうと有っても無くても効力はあまりない。実際には法律にあるからということで、実質的な力を持つということだと思います。
 私ども民主党は、周辺事態の認定などを国会の承認事項とすることと、「周辺事態」の定義に制限を加える修正案を出しました。今回の法律が例えば無い場合、ガイドラインはガイドラインで動いていきます。そして政府は、後方地域支援活動と捜索救難活動に制限を受けることになりますが、それ以外は出来るのです。国会のチェックも無ければ周辺事態は政府の思うがままに、あるいはアメリカが認定するままに周辺事態として認定されてしまうということになるのです。ですから国会承認ということと周辺事態を制限するということをしっかり確立したほうがガイドラインそのものに対するチェックになるというように私は考えています。


○民主党修正案「国会事前承認と周辺事態制限」について

 今度の周辺事態は従来よりも2つの点で枠を拡大しています。ひとつは範囲の拡大をしたということです。今までは、昭和36年2月26日の予算委員会で出された「フィリピン以北の日本の周辺」という統一見解が極東の範囲でした。このとき質問したのが私の父です。また、安保条約の第5条では、日本が攻撃されたときにはアメリカは支援協力をしますと、第6条では、アメリカは極東の平和と安全のために日本の基地を使用でき、日本は基地を提供し、施設区域を提供しなければいけないとしています。第5条はアメリカの義務、第6条は日本の義務です。極東の平和と安全のためにアメリカは基地を使える、では極東の範囲はどこなのかといわれてフィリピン以北で日本の周辺という統一見解が出ました。この中には台湾が入っています、韓国も入っています、しかし北朝鮮は入っていないし、中華人民共和国も入っていません。というのも、あの1960年頃はまだ東西対立時代でしたから、東側の国が西を攻めてくる、そこでアメリカの行動が開始されるということを前提にしていたので、そういう区別になっていたわけです。
 ところが今は東西対立が終わっていますからどうしたかというと、「アジアにはいろんな不安定要素があるから、それを解消するために日本とアメリカは協力しましょう」とクリントン大統領と橋本さんとのいわば共同宣言がなされたわけです。そこでアジア太平洋地域の安全のために日米は協力するという約束をしてしまい、それが今度のガイドラインになったわけです。
 このように範囲は拡大しているのですが、どこまでかは分かりません。政府が範囲を絶対に言わないからです。中東とインドは入らないと言っていますけれども、それ以外は入らないと言っていませんから、インドネシアやマラッカ海峡、そしてフィリピンとベトナムと中国が領有権を争っている南沙諸島という地下に石油資源がある島々、そして台湾などはこの範囲の中に入る可能性が大いにあるし、北朝鮮はやはり入れているでしょう。ですから前に比べて対象の範囲が広がることになります。
 それからもうひとつは、日本の自衛隊というのは日本の国土を防衛することが目的ですから、自衛権が発動されるのは日本が攻撃されてからです。ところが今度の周辺事態では、日本の安全とは直接関係ないアジア諸国の紛争に出動する米軍の協力をするという形で自衛隊が行動することになってしまう、これが一番大きな問題点なわけなのです。
 ですからそこに限定を加えて、その外延の部分に絞ったらどうかというのが私どもの考え方です。というのは、政府は周辺事態というのはどういうことかを6つのケースを上げて表しました。政府は地名を出していませんけれども、想定しているのは、ひとつは朝鮮半島で、例えば北朝鮮が韓国を攻撃した場合、攻撃する恐れのある場合、それからそういう何らかの紛争があって終わったけれども安定していない場合、北朝鮮の中で政治的な混乱が起きて難民が発生した場合、そして北朝鮮の核開発に対して国連の安保理事会で決議して経済制裁をやろうとした場合です。もうひとつは中国と台湾の問題ですが、台湾が独立宣言を行なって、中国がそれに対してけしからんと言って攻撃をしたときは、国際法的には「内戦」という認定を受けますが、それが拡大をした場合ということですから、政府が言っている6つのケースというのは、朝鮮半島や北朝鮮国内、台湾で何が起きても介入できる要素になっています。ところがこれは日本の安全からいうと直接関係があるかどうか疑問ですし、日本に対して弾が飛んでこない限り安全には支障が無いわけですから、日本が攻撃を受ける恐れのある場合というように限定しようというのが私ども民主党の修正案です。ですからあの法案を廃案にするよりは、私ども民主党の2つの修正事項である、国会の関与を全面的に行なうということと、周辺事態を制限するということのほうが、ガイドライン全体に対するチェックになるのではないかと思っております。


○いまの戦争には前線も後方もなく、協力が即戦争参加になる

 アメリカが実質的に日本に期待していることは、私は3つあると思っています。それは何かといいますと、捜索救難活動、対潜哨戒活動、機雷掃海活動です。
 日本の海上自衛隊はアメリカとの共同訓練を20年も30年もやってきていて、その中でそれらの活動を密接にやってきました。というのは米ソ冷戦時代、日本の海上自衛隊はアメリカの対ソ戦略の一環を強く担っていたからなのです。これは前にもお話し申し上げていますが、アメリカとソビエトは北極を真ん中に相対している形になっています。そこでの問題はやはり核です。核の抑止力という点ではアメリカもソビエトも同じ戦略でした。それはどういうことかと言いますと、攻撃されたら核で報復するよと、その報復力を持つことで相手の攻撃を抑止しようと考えたわけです。その報復力といいますか攻撃手段は3つありまして、ひとつは大陸間弾道弾(ICBM)、それからB52などの爆撃機による爆撃、そして潜水艦による攻撃です。
 お互い大陸間弾道弾がどこにあるのかは全部分かっています。そして大陸間弾道弾はそれぞれ目標が決まっていたと思います。どこを目標にしたかはお互い発表していませんけれども、このミサイルはモスクワだとか、これはニューヨークだとか、主な大都市や戦略的な基地、レーダー基地や総司令部のあるところを標的にしていたと思います。お互いに分かっていましたから、ここでの力の優劣は無いのです。
 それから爆撃機ですが、これは相手が攻撃してきた、大変だとなるとすぐ核ミサイルを積んで飛び立つことになっています。ただ飛行機は迎撃ミサイルなどの攻撃に対して弱いわけです。
 そうすると一番強いのはやはり潜水艦です。潜水艦は自分の位置を相手にキャッチされづらい。ですから「海の中の戦い」といわれるところが2つありまして、ひとつはオホーツク海から北太平洋にかけてで、ここは冷戦時代には米ソの一番の接点だったのです。もうひとつは北のほうのバレンツ海です。
 そういう時代から日本は、ソ連の潜水艦が日本海から出たのか入ったのか、日本海にいるのかいないのか、オホーツク海にいるのかいないのかということを、海上自衛隊のP3Cという対潜哨戒機でほとんど把握していたと思います。
 日本はこのP3C対潜哨戒機を約100機保有していて、そのうち90機が実戦配備されています。現在は恐らく日本海を中心として飛んでいます。オホーツク海のほうはもうやっていないでしょう。日本海を常時飛び周り、どの国の潜水艦がどこそこにいるなど、そこで得た情報は横須賀にある潜水艦の支援センターというところにリアルタイムで送り、そこからアメリカに伝わるシステムになっています。
 また早期警戒管制機AWACS767という飛行機も日本に導入されています。この飛行機は500km四方、つまり旭川上空を飛んでいれば北海道全体、あるいはもっと広いでしょうか、その範囲で飛んでいる飛行機の敵味方を識別できるのです。しかも最大で約500機の敵味方を一瞬にして識別できるのです。そしてその情報をアメリカや日本のイージス艦に送るのです。このイージス艦というのは飛んでくる2〜30機の飛行機それぞれに一度にミサイルを打つことが出来るのです。それくらい精度の優れたイージス艦に日本のAWACS767からリアルタイムで情報が提供され、画面のボタンを押すだけでアメリカのイージス艦からミサイルが飛んでいくということになります。
 このような関係を政府はガイドラインの中で「情報の交換」といっています。確かに情報の交換ではありますけれども、それはまさに戦闘行為をやっているアメリカに対して、そのアメリカの敵の情報を提供するということですから、これはもう日米が一緒に戦っているということになり、これは本来、日本の憲法で禁止されている集団的自衛権の行使だと私などは思います。そして、そういう議論を国会でも行なってまいりました。
 いま言った対潜哨戒活動と機雷の掃海ですが、アメリカの場合は空母が中心となって攻撃をするので、空母周辺の広いエリアの安全を確保するため、敵の潜水艦の監視や機雷の排除を徹底的にしています。この機雷の掃海では、朝鮮戦争のときに日本が実質的にはアメリカの指揮下に入って機雷の掃海に従事した、そして亡くなった人もいるという歴史があります。
 それから救難捜索活動についてですが、これはほとんど戦場で行なうことです。確かに、航空母艦に着陸してもらってケガした人などを救助するというようなこともあるでしょうが、アメリカは支援艦を持っていますから足りていて、日本にとっては、戦闘現場で撃墜されたというようなアメリカ兵を救助するのが今度の後方地域支援活動に並ぶひとつの活動になっているのです。ですからいまの戦争には前方も後方もなく、ほとんど一体となった行動になり、相手から見れば敵国と一緒に戦争をやっている国だということになりますから、一瞬にして日本が戦争当事国に変わるという危険性があるのはこの対潜哨戒、捜索救難、機雷掃海活動です。
 それから燃料や武器、そして武装したアメリカ兵を輸送するのは後方地域支援活動のひとつになりますから、これは自衛隊がやると思います。
 しかしそれ以外の後方地域支援活動の主なものは、ほとんど民間の仕事になると思います。例えばの話ですが、アメリカ軍が物資を新千歳空港に降ろし、それを岩国基地まで運ぶ、横田基地まで運ぶという場合などは、恐らく民間の運送会社に「運んでください」と言って運ばせることになるだろうと思います。これはアメリカが直接民間と契約するケースと、日本が民間と契約するケースが出てきます。このことについて運送組合や航空関係の労働組合が猛反対しているのは、「そんな当事者にされたのではたまらない」という気持ちからなのです。現在のアメリカは特に後方支援体制をしっかり確保してから戦争をやる国ですから、物資の輸送というのは物凄いことになります。日本全国の空港や港で一日に何十、何百もの飛行機や船が出入りするというような状態になりかねません。これがガイドラインの中身でありまして、非常に危険性や問題の多いものであります。
 国会では私ども民主党の修正案は通りませんでしたので政府案に反対したわけですが、問題は外交にあるのです。つまりガイドラインというのは何か起きたときにどうするかという話です。日本政府がここ2〜3年やってきたことは、この何か起きたときにどうするかという話ばかりなのです。起きないようにどうするかという話を全くやっていないのです。


○一貫しているアメリカの対アジア政策、対北朝鮮政策

 アメリカという国は非常に勝手な国でして、ついこの前までコソボ自治州の解放軍を「テロリスト集団だ、こういうものは排除しなければいけない」という話をしていました。その話に乗せられてユーゴスラビア軍がコソボ解放軍に対する攻撃を始めたのです。そのうちいつの間にか、ミロシェビッチ大統領というのは怪しげでおかしい、しかもやっている活動はやはり許せないということで、今度はそのコソボ解放軍にCIAが訓練をするというようなことに変わったのです。このようにアメリカの行動というのはコロコロ変わります。
 今回のNATOのユーゴ空爆は国連決議に基づくものではありませんし、NATOの参加国がユーゴの攻撃を受けたわけでもありません。ユーゴの手で民族浄化が行なわれている、これをやめさせるための人道支援という形で行なわれました。ユーゴの行為も許せませんが、これはひとつの国の中での内戦であり、国連で議論し解決すべき問題だと思います。
 さて、アメリカのアジア政策ですが、ひとつは日米同盟、米韓同盟といったような2国間同盟をアメリカは大事にしますという政策です。それから、アセアン地域フォーラムなどのようにアジア各国が入っている多国間の集合体なども支持し、大事にしますという政策です。ちなみにアセアン地域フォーラムでは、国家間の信頼醸成措置をどうするかや、お互い言葉が違いますから、例えば水害で苦しんでいるところに共同で人道支援をするときに言葉の違いをどのように解決するかなど、いろんなことをやっています。
 それから3つめに、中国に対しては建設的に関与しますという政策です。ソ連に対してやったような封じ込め政策はやりませんということです。
 そして朝鮮半島については2つのことを目標にしています。ひとつは朝鮮半島における戦争を抑止すること。それから北朝鮮の核開発を阻止することです。アメリカは冷戦終了後も、国防の最優先事項は核兵器や生物化学兵器などの拡散を阻止することとしています。もちろん自国ではそれらをいろいろ持っていますが、他国に拡散するのは阻止することとしています。そのためなら何でもやるというように理解しておいたほうがいいと思います。核開発を阻止するということには2つありまして、ひとつは核弾頭の開発、そしてそれを飛ばすミサイル開発、この2つは絶対阻止するとしています。
 北朝鮮の核開発を調査しようとした国際原子力機関(IAEA)の特別査察を拒否した北朝鮮が、1993年に核拡散防止条約(NPT)からの脱退を表明したことで危機が生じました。その解決のため、94年にカーター元大統領が金日成主席と会談し、またその後の米朝間交渉で、北朝鮮が核開発をやめる代わりに、アメリカがKEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)設立し、原子力発電所を作ること、そして原発が完成するまでは重油を提供することを合意しました。
 アメリカと北朝鮮は朝鮮戦争のときの敵国同士ですし、韓国と北朝鮮との間には停戦合意があるだけで、何の平和協定もありません。そういう状況の中でアメリカと北朝鮮は話し合いを始めたのです。話し合いの中での議題はいろいろあります。例えば北朝鮮国内でのアメリカ兵の遺骨収集や行方不明アメリカ人の捜索というのは、アメリカにとって非常に大事な課題となっています。そしてミサイル技術の移転問題。それから、アメリカが平壌に事務所を置く、北朝鮮もアメリカに事務所を置くということも議題になっていまして、いくつかの議題が並行する中で進んでいるのもあれば遅れているのもありますが、米朝会談は継続的に行なわれてきています。
 その米朝会談がベースになって四者会談というのが開かれています。アメリカと北朝鮮のほかに韓国と中国が加わったものです。米朝会談からこの四者会談に拡大できたのはアメリカの相当な努力によるものです。アメリカは北朝鮮を脅かしもしたけれども、食料支援をしますよ、エネルギーも供給しますよと言って交渉を続けてきたのです。現実として、韓国にはアメリカ兵が4万人いますから、戦争が起きればそれはもう大変なことになるわけです。もちろんアメリカと韓国の軍事力のほうが圧倒的に強いわけですが、しかし多くの死傷者が出るから戦争は抑止しようということで、アメリカは外交的な努力もしっかり行ない、もしそれが失敗した場合どうするかということもきちんと考えて対応を準備しているのです。


○日本は無条件で国交回復交渉を始めるべきだ

 ところが日本がやってきていることは何かと言うと、事を起こさないための努力は何もやらないで、起きたらどうするかということだけやっているのです。アメリカ国防省などの幹部が来日したとき、日本は異常だと言っていました。何で異常かというと、新聞記者に会うたびに「アメリカはいつ北朝鮮を攻撃するのですか、どういう状態なら地下施設を攻撃するのですか」という質問ばかりしてくると。だから去年12月から今年1月くらいにかけて『戦争熱に浮かれたニッポン人』といってアメリカのペンタゴンでバカにされた時期があるのです。外交だって何もやっていないでしょ。何をやられようと犬の遠吠えみたいなもので、実際に席について話が出来ないわけですから。交渉の席についた上でお互い言いたいことを話し、合意したものを議題にして進めていけばいいわけです。
 ですから私ども民主党もいろいろ議論いたしまして、実は5月21日と6月1日に、北朝鮮の子供たちに向けて乾パンを届けております。乾パンというのはこういう缶に入っているビスケットですけれども、中に氷砂糖なども入っていまして子供たちが非常に喜ぶものですから、20万食分のお金を民主党議員の皆さん方にカンパしていただきまして、民主党の議員2人ほど付き添って、第1回目は10万食を届けてまいりました。これは子供たちに渡してほしいということで、幼稚園や学校などを対象にしていますが、間違いなく届きます。国連機関のFAO(国連食糧農業機関)が5〜60人ほど平壌に職員を持っていますし、NGOのスタッフもいまして、北朝鮮のほぼ8割の市町村に自由に入れるという報告を受けています。
 ですからただ「けしからん」と言うのではなくて、やはり日本政府はしっかりした外交をしていかなければいけませんし、私ども民主党としては本当に無条件で国交回復交渉を始めるべきだというように思っています。もちろん北朝鮮という国はひどい国だと思います。国民の1割が餓死している、これはまさに政治の責任であり、それを許している政治というものにやはり大きな責任があるのだというように思います。
 ともかく冷戦が崩壊した後、韓国とロシア、中国が国交を回復しましたが、その時一緒に日本とアメリカも北朝鮮と国交回復が出来ていればだいぶ違ったでしょう。
 それから、北朝鮮の経済はコメコンというソ連を中心とした東ヨーロッパ圏の枠組みの中に入っていました。コメコンのシステムは分業体制でして、ですからロシアや北朝鮮は今でも苦労しているのです。つまり一国の中で農業も工業も含めてあらゆる産業を抱えている中国やベトナムと違いまして、例えばチェコは医薬品、ハンガリーはトラック、ブルガリアは肉というように、各国で生産を分担したのです。そのような中でソ連が中心となり、この国はブルガリアに医薬品をこれだけ送れとか、その代わりこれをそっちからというような計画経済を、国を超えてやっていたわけです。
 朝鮮半島というのはもともと韓国が農業地域で北朝鮮は工業地域だったので、北朝鮮には工業資源はありますけれども他のものは無い。ですから農業は弱かったわけです。そこで必要なものはコメコンの中で調達してきた。自国から鉄鋼などを輸出する代わりに農産物を輸入したり、あるいは最後になりますとロシアに木材の伐採などのためのたくさんの労働者を提供して、その代わりにお金をもらうというようなことまでやってきていました。それが、ロシアと中国が市場経済になってコメコンが崩壊しましたから、もうどうしようもなくなった。ロシアも全く同じです。
 これに対して中国やベトナムは一国の中であらゆる産業を持っていましたから、市場経済になったときに国民のエネルギーが一気に出たのです。その差がいまの中国とベトナムの活気と、ロシアと北朝鮮の停滞という形にはっきり表れているわけです。ただいずれにしても、国際的な支援協力をしないで「あの国は放っておけ」と言っていいかというと、むしろそこで起きる問題のほうが大きい、つまり問題が起きたときにかかるお金、かかるエネルギーのほうが大きいわけですから、支援しながらうまく国際社会に仲間入りできるようにしてあげることが、日本の安全保障にとっても大変大事なことだと思います。日本はいまの流れでいけば、朝鮮半島で何か起きて、さあ軍事力の増強だということに成りかねません。テポドンというのも、本当は日本の自衛隊とアメリカのペンタゴンが結託して流している情報だという冗談もあります。
 最近では、アメリカのペリー調整官が大統領特使として訪朝したり、それから中国と仲が悪かった北朝鮮から北朝鮮ナンバー2、たしか外務大臣だと聞いていますが、その人物が訪中するなど、少し物事が動いているというように思いますので、このときにやはり日本もきちっとした外交を展開していくべきだというように思っております。


○年内に衆議院解散・総選挙

 国内の経済、景気問題とガイドラインなどのお話は以上で終わりまして、これからの政局ですけれども、いまは自自公ということで公明党がなぜあれほどまでに自民党、自由党に手を貸しているのか私にはよく分かりません。というのは、公明党の支持基盤は庶民の生活だとか平和だとかを考えている人たちが支持基盤でありまして、それといま中央政界で公明党が取っている行動とは相当の距離感があるというように思うからです。中選挙区制を復活させるためだと言っていますけれども、私は政権交代という点から言えば、いまの小選挙区制のほうが可能性はあると思っています。負けたときは惨敗するかもしれませんが、勝ったときは政権が取れます。そういう意味では中選挙区制のほうが自民党の永久政権を続けさせることになるのではないかと私は思っています。
 公明党は中選挙区制、あるいは選挙区3名制にしようとしているようですが、これには自由党が反対していますし、自民党の中でも非常に反対が多いのです。なぜなら、例えばいままで北海道1区は定数6名でした。それが新制度で1名区になりましたので、政党間や議員間で協力して、この政党の議員が出ればそっちに自分の後援会を紹介するなどの活動をやっていますから、中選挙区制に戻ってまた一緒に闘うことになったら大混乱が起きます。だから自民党は絶対許すことはないだろうと言われています。
 そういう中で言いますと、自自公で選挙協力までやって選挙をやりますと、これは大変大きな力を発揮します。しかしそうやって自民党が勝ってしまったら、今度は公明党の出番が無くなるわけです。いま公明党というのは、参議院で自民が過半数を割っていて、公明党がキャスティングボートを握っているから割と強いだけで、衆議院も参議院も圧倒的に勝たせてしまっては公明党のキャスティングボートは効きませんから、全面的な協力は無いのではないかと思います。
 北海道では連合を中心にしながら公明党との間に今回の統一地方選や次の衆議院選挙も含めて、選挙協力の話がもうだいたい出来ているところです。
 私ども民主党では、ともかく選挙協力が出来るところとはやるというのが原則です。公明党ともやれば社民党ともやるということで、いま九州では社民党との選挙協力の話が非公式ですが行なわれていまして、住み分けをしていけるところはいきましょうというようにしております。
 解散総選挙の時期についてですが、自民党の総裁選は今のところ恐らく小渕さんと加藤さんとの選挙になるのでしょう。しかし経世会というのは非常に行動力があって選挙も強いところですから、だいぶ脅しもやっていて、「加藤さん、出たらそのあとは絶対許さないよ」というような脅しをかけていますから、その脅しに屈してしまうのか抵抗してやるのかということになります。そしてそのあとに補正予算をやって、だいたい12月に解散総選挙ということになるのではないかと思っています。
 私どもとしてはホップ・ステップ・ジャンプの勢いで、最初の参議院選挙は非常に『ホップ』したのですが、今回の統一地方選挙は全国的に負けたわけではありませんが、完全に足踏みと言っていいと思います。1増えたとか2増えたという感じでありまして、どうも『ステップ』はあまりうまくいかなかったようですが、『ジャンプ』で失敗したのではどうしようもありませんので、次の衆議院選挙では何としても勝ち抜いていきたいと、このように思っています。
 北海道ではみんなで結束して、今までの実績をさらに伸ばして、取れていない議席も取っていこうというように思っていますし、この1区もそういうことできっと大激戦になるだろうというように思いますので、皆様方のご支援をよろしくお願い申し上げたいと思います。
 今日はご出席頂き、そして本当に熱心にお話を聞いて頂きましたことに心からお礼申し上げたいと思います。ありがとうございました。