福岡政行 白鴎大学教授との対談
1998.8.23 札幌


福岡「98年参院選は『サイレント・レジスタンス』」
○横路:参議院選挙では、自民党・橋本政権に対してノーという答えが出て、その後民主党に対する支持率が急上昇しました。今回の富山と石川の参議院補欠選挙はどうなのかわかりませんが、富山は自民党の現職が亡くなって、選挙で負けた民主党公認候補が繰り上げ当選になりましたね。
 この今の状況というのは、自民党に対する批判が中心で、民主党の政策が選択されたのではないと、そういうご指摘がありますし、その通りだとは思うんです。しかし他面で民主党に対する支持と期待というのは高まっているということを非常に緊張して受けとめています。
金融問題を含め、税制、そしてこれから問題となる年金などいろいろ解決しなければならない問題が多いので、しっかりしなければいけないと思っています。民主党としてはそれらの課題に急いで対応すべく、政権引継委員会のような形で少し進めているんです。
 この今の国民の動き、状況を先生はどうお考えですか。
○福岡:6月末に参院選が始まりましたが、平成元年の熱狂というか熱風というか、マドンナブームと違って、私は「サイレント・レジスタンス」というか「静かなる抵抗」というか、国民一人一人がこの現状について静かに、しかし非常に怒っていると思います。
 ただ選挙前の段階では投票率はそれほど上がらないで50%そこそこだろうという流れでしたが、それを変えたのはやっぱり橋本総理の7月5日のサンデープロジェクト等々による報道でした。いわゆる税制改革、恒久減税、これを恒久的な減税とか、恒久的減税という、まあ官僚的なまやかし、ごまかしを、国民が20〜30分聞きながら、これはダメだと考えたんです。今回の選挙は参議院選挙ですから、これが変わって自民党政権がなくなるということはまずないと、しかし今の日本は橋竜不況、橋本不況なんだから何とか変えようと国民が動いたんですね。おそらく投票行動の分析とすると、自民党支持者の3分の1が自民党以外のところに票を入れてないと、こんなにドラスティックな変化は起きないと。無党派層は14%、44.5%から58.8%まで、こう増えてくるわけですから、この結果、やっぱり自分たちの1票で総理大臣を辞めさせることができたんだと有権者は強い印象を持ったんですね。

横路「まず現実の姿を明らかにしなければならない」
○福岡:いま横路さんがご指摘のように、その後の世論調査では、民主党のバブル高支持といいますか、あくまでもバブル支持ではあります。だけどここでもし自民党が後で触れる金融問題でミスをするならば、そのときはおそらくもう1度変化が起き、菅直人に総理大臣をやらせてみよう、横路孝弘に自治大臣かどうかわかりませんけども、大臣をやってもらいたいという流れになるでしょう。そういうようなことを含めて、この政局秋の陣というか、9月中旬からおそらく10月中旬くらいまでの1カ月で、アメリカ、マーケット、日本の金融機関の不良債権という、この3点セット連動の問題で動くんだと思うんですね。
 大きな流れをつくった平成10年というのは、ある意味では平成元年のあの選挙と同じように、あれ以上かな、もしかすると日本の民主主義にとって、1票で変わるという実感を持ったという意味では、非常に大きな選挙だったという気がします。
○横路:ですから私どもの方も、まず総理大臣は辞めさせることができた。さらにその上に例えば参議院で多数派を取ることによって、参議院がこう変わりましたよという実績を積みたいと考えているんです。それで今回の常任委員長の問題も、なんとか重要な委員会の委員長ポストを取ろうと努力しました。
これからの政治のポイントというのは、やはり情報の公開、ディスクロージャーということだと思うんですね。よく、国会は国政調査権を持っているのに何をやっているんだという意見がございますが、これは委員会で決議しないと資料要求などができないわけなんですね。それで今度、金融財政委員会の委員長ポストが民主党になりましたんで、私どもはとにかく国政調査権を正当に行使して、できるだけ銀行の現実の姿というのを明らかにして問題の解決に当たろうと考えております。金融問題なども護送船団方式の下で一切を隠して先送りして、今日まできてシステムが破綻してしまった典型じゃないかなと思っています。
 ですから、橋本はだめというところから、菅でオーケーという具合にどう変わっていくかということですね。そこがやっぱり一番大きなポイントだと思っています。

福岡「わかりやすい政策が国民の支持を得る」
○福岡:国政調査権という当然の私たちの知る権利ですよね。しかしいまの国会運営を見ていると、これもなんだか、規定にはあるけれども、条文にはあるけれども、やっぱりなかなか今まで生きてこない。これはもうロッキード事件以来、これは横路さんがやったあの流れのなかにあったと思うんで、私たち自身ももっともっと考えなければいけない。例えば直接総理大臣を選ぶこととか、いろんな問題があるけれども、とにかく私たちの意志がストレートにこうやって国政に反映する1つの手段としては、今のいわゆる金融機関のディスクロージャーというか、ディスクロージャーしない部分、情報不開示の問題について非常に大きなものがあるので、今回は非常に大きな進歩だと思うんですね。
 それでもう1つは、今の運営を見ていて、民主党が全面対決をしない、あくまでもやっぱりオルタナティブであると。それはかつての社会党ではないと、あくまでも社会党ではない、なんでもかんでも反対だというんで、これは例えば自由党や共産党という名前はともかくとしても、追い込むんだったらこの秋は政変にもなるし、おそらく参議院、今日の新聞だと公明党も野党に傾いてきたみたいな話もありますし、追い込めばそういうような展開になるんでしょう。それをやっても一時的に何かあっても、結局はこの金融機関の不良債権の問題で、公的資金は使わざるを得ないわけですし、ソフトランディングかハードランディングか、ブリッジバンクか国営銀行か、いろんな選択はあるでしょうけれども、そのときにきちんとした対案を出せるかどうか、建設的な議論ができるかどうかというところを、国民はしっかり見てると思うんですね、いま。
 それがちゃんと出来上がってくる準備をしているといいんです。ただこの間の参議院の質問を見てもちょっとかったるいと思いました。かったるいとは思いましたけども、やっぱりここで国民にわかりやすく議論を煮詰めていって、不良債権があることが当然の認識になって、グローバルスタンダードな自由競争になって、護送船団方式でなくなる。日本はとにかく闘わないといけないときに、100兆円近い、もう越えると思うけども、その不良債権というリュックサックを背負ってアメリカのように手ぶらで来て、バシバシってひっぱたいていくやり方でやっても、とても勝てないと思います。ですから今、金融再生のための公的資金の問題だって、100点満点の答えはないでしょうね。お金なんか1円も使いたくないけども、しかし心臓停止の寸前の状態になっていて、全国各地、北海道もそうですが、やっぱり手足にしびれが来てることがはっきりしているわけですから、ある程度の栄養剤を打たなければいけない。その辺の議論を国民にわかりやすくしていただくと、私は「おっ、民主党やるじゃないか」と思うんです。それがかつての菅直人さんのHIV問題もそうだし、特に最近国民の評価が一番高いというのは、中坊公平さんの住専処理の徹底したやり方ですね。ただダメだとかどうこうじゃなくて、具体的に1円でも100円でも多く税金を使わせないために、住友銀行と全面的に対決すると、そういうようなことなんだと思うんですよ。
 そういうように、たとえば国政調査権1つでもやればできるじゃないかと、やっぱり憲法を尊重すること、これは原点ですから、そういう憲法を尊重してその条文のなかでできることはあるだろうと、できなくて反対して力づくでもう議論はできないというようなことじゃなくて、なにかこの現状の中で取れるんじゃないか、やり方があるんじゃないかという、ちょっと知恵を出してもらう。
 それが菅さん人気だろうし、中坊さんのいまの人気というのもすごいですよ。彼が一切講演をしないということもあるんですけども、異常な高まりがあって、いろんな人がNHKの再放送の番組を見て、視聴率が高くなるというようなことなんで、そのへんの知恵を出してぜひやっていただきたいと思います。

横路「問題を先送りすると墜落してしまう危険性もある」
○横路:そのバブルのときの問題というのが今の金融問題に集中的、なおかつ象徴的に表れていて、大変深刻な事態だと思うんです。
 2001年の3月からはペイオフということで、国民の預金しているお金というのは全額保証ではなくなるわけですよね。そうすると、少なくとも1年ぐらい前から国民のほうは自分の預けている銀行は大丈夫かどうかという選択を始めますよ。
 そうすると2001年の3月、その1年ぐらい前から国民がそういう行動を取り始めるとして、もう2年ないわけですよね。この間に個々の銀行を含めた金融システムについての信頼感というのを、どうやって取り戻すかということだと思うんですよ。
 そうすると大手19行が現在どんなに破綻していても、これも必ず救っていきますよという形でいまから取り繕っていったとしても、2001年3月に国民がどんな行動をするのかというと、もうはっきりしていると思うんですね。
 ですから、ソフトランディングかハードランディングかという議論ありますが、ソフトでもハードでもランディングすればいいわけで、ランディングしないと困るわけですよね。だから問題を明らかにしないで、先送りしてなんか裏のほうで合併だ、やれなんだということだけで解決しようとすると、むしろランディングしないで、着陸寸前に燃料切れで海に落ちてしまうとか、墜落してしまう危険性もあるんじゃないかと思うんですね。

横路「長銀と農林系を助けるために税金を使うことになりかねない」
○横路:拓銀は倒産したわけですが、拓銀のように地域に大きな影響を持ってる銀行というのは、北陸銀行など、みんなそれぞれ地域にありますよね。こういう銀行でもかなり厳しいところがあります。
 それから19行の中でも、私どもの見るところもう完全に破綻してしまっているところもあるわけで、今年の3月に公的資金導入をしましたけれども、長銀など含めてみんな株主配当をやってますよね。長銀がもし債務超過で破綻してるのに株主配当をやってるということになれば、これは刑事責任も問われなければいけない問題だと思うんですね。
 デリバティブを行っているので国際的な影響というのがよく言われるんですが、調べてみると、外国の銀行は、長銀はもう危ないと見てるわけですから、取引というのはそんなにしていないようです。ですからどういう対応をしたらいいのかというのはいろいろあると思うんですけれども、完全に債務超過になっている銀行は、やっぱり国が管理して、そしていい部分は残すにしても、やっぱり大部分は整理するという方向だろうと思うんですね。
 長銀が問題になっていますが、長銀の系列ノンバンクの日本リースというのがありますね、そこの借入金がおよそ2兆円なんですね。農林中金だとか、それから全信連、共済連、それから各生保・損保みんないろいろとお金を貸してます。あれをどういう具合に償却していくのかというと、専門家によると50%ロスだろうということをみなさん言います。やや1兆円近いお金ということになりますよね。
 そこで長銀が自分の出したところは全額放棄してしまうにしても、またなんだか農林系を助けるような小細工をやって、そのために国民の税金を使うということになりかねないんですね、いまの進んでいる枠組みというのは。

福岡「世界のマネーウォーに日本はついていけるのか」
○横路:拓銀は北海道全体のメインバンクだったので、拓銀の崩壊でこの地域経済に与えた影響というのは、政府が当初考えていた以上に大きいものがあったと思うんです。
 日本の銀行の実態をはっきり知っているのはやっぱり政府ですよね。拓銀も1994年の8月に大蔵検査を受けてまして、そのときの不良債権は2兆円以上になっていたんです。そのときに拓銀が自己査定した不良債権というのは、基準が違うこともあるんですけれども、6000億円ぐらいですよ。拓銀の考査、大蔵考査でいうと4倍に膨れ上がって非常に問題が大きいという指摘はしてるんです。
 しかしその後に業務改善命令を出して、こういうことでこうしなさいという指導をした形跡はまったくないんですね、表では。そして裏では道銀との合併の話をして、結局その計画が白紙になったと同時に拓銀が潰れてしまったと。どうもいまやっていることと同じことなんですね。政府は銀行のことをみんな知ってると、しかし表に出すと大変だからと言って、表に出さない。なんとかしようと、はいこっちとこっちはくっつけよう、こっちとこっちはこうやろうとやっている。いま公的資金を投入する枠組みができましたから、それでやってしまおうと。でも住友信託と長銀の合併話だって本当にうまくいくかどうか、住友信託の方だってそんなに体質強い銀行じゃないですからね。
 ですから今度の問題を含めて、長銀ばかりじゃなくて、まだいろいろと問題を抱えている銀行はたくさんありますから、人に言わせれば19行全部を国の管理にでも移してやったほうがいいという意見もあるぐらいですよね。
○福岡:今年2回ほどニューヨークへ行っていろんな取材をしたんですが、1つ感じることは、現代は世界的マネーウォー、お金の戦いであるということです。アメリカのアングロサクソンの資本主義というのは、いわゆる株主資本主義ですから、株主への配当が途絶えると、企業は潰れても買収しても株主に損をさせなければいいと。
 しかし日本はそうはいかなくて会社資本主義ですから、会社を運営していて従業員を失業者にしてはいけない、そういうやり方ですね。それ以上は言わないんですが、そういう中で実態経済の約40倍のマネー経済の時代になると、どうやったって金の持っているところが勝ちですよね、すべてのところで。
 それはニューヨーク・ウォール街を中心にヘッジファンドだけではないですけども、巨大な金が、現状で推定約40兆円と言われている金が動くわけです。ですから今日も円が例えば3円ほど一気に円安になって、今度147円から141円ぐらいまでバーっと2週間ぐらいで動くわけです。
 動くときにヘッジファンドは、実をいうとさまざまな情報を持っているんです。もともとルービン財務長官はアメリカの投資顧問会社の社長ですからね。そういうような人たちが金融補佐官で入っていって財務長官になる。日本で言う大蔵大臣ですね。これが本当に情報を持ってやりとりすると、ヘッジファンドというのは通貨為替でも株でも乱高下しているときに一番儲かるんです。たまたまヘッジファンドをやっている友人に聞いたんですが、その乱高下で儲かっているんだと、上がろうが下がろうが、彼らには関係ない。
 だからアメリカの株価が9300〜400ドルまでいって、いま8500ドル切るか切らないか、800〜900ドル動いているわけです。恐らく7000ドル台に下がっても、彼らは要するに空売りをしたり、先物取引などいろんなことをやって全部勝負している。
 そういうのを見ていますと、本当にアメリカのなかでもどんどん変わっていることを感じるんです。それに日本がどう対応するのか、グローバルスタンダードというなかで日本の金融機関は巨額の不良債権を抱えている。いろんな人と話していると大手19行でもおそらく将来的に5行ぐらい残る、再編成をする。こういう問題があると株価にはっきり出ますよね。最近三和銀行は1000円切っちゃったけども、まあ1000円以上の銀行が2つしかない、興銀もそこそこありますけど、それをどういうふうにするのか。

横路「信頼回復がどんな政策よりも一番大事」
○福岡:いま横路さんの話で、ワースト4の長銀をワースト6の住友信託が抱える、本当は長銀は三菱信託と一緒になりたかったという生意気なことを言ってるそうですけども、そういういろんなことがあっても、この2行の合併は無理ですよね。この上にどっかが乗るとかというようなことじゃないと。
 だけどもハードでもソフトでもそれこそランディングすればいいと、まさにその通りで、ただ失速して飛行場寸前でパタッと倒れちゃう。私たちはこの1年ずっと東京で金融機関の動きを見てきましたが、長銀ではもう2月ぐらいから月に3000億円ぐらいワリチョーの解約が進んできたわけでしょう。それが合計して数兆円になってくると、これはもうもたない。それは先ほどの横路さんのお話のように、2001年3月というデッドラインがあるわけですね。それは1千万円以上の預金者は少ないけれども、実を言うと金持ちはドーンと持ってるわけですよね。ですから日本の金融資産の2〜3割くらいは本当に限られた4万人か、何万人かの人が持ってるといわれるぐらいのいわゆる金持ちがいる。この人たちが長銀のワリチョーだとかいろんなことをやって資産経営をしてきたのも事実ですから、それがいまどういうふうに動いているのかというと、メリルリンチだとかトラベラーズだとかの外資系に流れてるのは事実ですよね。
 ですから私は徐々にこの1年ぐらいで、1500万円とか2000万円持っている一般国民が、じゃ郵便貯金に500万円とか、東京三菱に500万円、住友銀行に500万円と、バランスよく分けていく知恵はあると思うんです。
 それよりもいま日本が大きな荷物を背負ったままだと、アメリカの外為法自由化によって、4月だけだって日本から1兆7千億円ぐらい外貨預金だとか投資信託で外国に流れたんですから、これからも流れるでしょう。アメリカのミューチャーズファンドという投資ランクが平均の利子が年15%ですね。あのフィナンシャルタイムズやウォールストリートに3ページぐらいにわたって出ている記事を見ると、日本で0.3%でしょ、利子が。
 秘密ですけれども私の母親は86歳で一千万円の預貯金を持ってます。親父は公務員で、遺族年金があって、子どもを5人産んで、そのうち4人が男で、みんな小遣いやってて、親父が死んでもう17〜8年経ちますから、それを貯めてって自分の家があって、姉さん夫婦と住んでいれば、貯まるわけですね。恵まれた母ですよ。それでもこうやって北海道に行くと言うと、「私も連れてってくれ」と言うんです。自分は1銭も払わないなんて言うから、「利子は?」って聞いたら「0.3%だ」って答えるんです。私はそれなら行けるじゃないと言ったんですが、1千万円の利子0.3%、3万円でしょ。「なんとか航空」ができてるかどうか知らないけれども、まあ3万円では無理でしょう。言っちゃいけないけどJALとか全日空とかじゃ無理ですよ。
 これではトマムや観光地はまったくダメになる。そういうようなことも含めて、よくこの超低金利で国民が黙ってるもんだと。減税の恩恵だって実際のところ全世帯の38%ぐらいしか受けてないんでしょ。361万円以下の非課税の人たちはもちろん関係ないし、年金生活者の人はもちろん関係ないし、またいわゆる農業関係も少ないですよね。そう考えると、年金生活者などは減税なんもないんでね、私は食料品の非課税など何か是非やってもらわないとなかなか景気は上がってこないなという気はしますね。
○横路:自給ギャップが人によっては30兆円あると言ってますから、公共事業を投入しても、結局のところ景気がそこでぐっと回復するということにはならないんで、下支えの下支えの役割しかないんだろうと思うんですね。
 昨日、道内の各地方から来てくれた人たちとちょっと話をしたんですけれども、漁業や農業の町の景気はどう?って聞いても、そんなに不景気を実感しないと言うんですね。農業や漁業もいろんな意味での景気低迷の影響は受けてますけれども、その地域そのものがだめになってるということはないんですね。
 結局、この景気低迷の影響を一番受けているのは消費都市なんです。ですから今回の基本的特徴というのは大都市に集中的に表れています。複合的な要素が絡んだ不況ですから、何かやれば良くなるというものではない。根本的な問題は今の政治における、例えば金融システムでもそうですけれども、その信頼が揺らいでいるところにあるわけですから、政治の信頼回復ということがどんな政策よりも一番大事なことだろうと思うんですね。
 やはり将来を展望して、そしてしっかりそれに向かってやっていきますよという政策の方向性と、改革の意志を持った政治的なパワーというものが非常に大事だと思いますね。

横路「昔に戻るのではなく、一歩前進で着地する」
○横路:話はちょっと変わるんですけれども、結局、橋本総理の六大改革というのは何をめざしたのかはっきりしなかった。日本の社会を将来的にこうするんだというヴィジョンがなかなか見えてこなかったと思うんですね。言葉の端々、グローバルスタンダードだとか、規制の撤廃とかいろんなことを言われましたが、なんとなく、より効率と競争の社会なのかなあという以外のイメージというものは全然出てこなかったと思うんですね。
 環境問題や資源問題などが制約要件として非常に大きくなってくるなかで、このバブルというのは、ある意味で言うと神様が与えてくれたチャンスなのかもしれないという気もするんです。
 国家にしても企業にしても個人にしても、信用という風船があまりにも膨張しすぎて浮き上がってしまったわけですよね。いまはそれが収縮して地上に下りてくる過程にあるわけです。そこで大切なのは、膨張前の元の地点に戻るんじゃなくて、着地点をもうちょっと先に、21世紀により高度なところに設定することが必要だと思うんです。
 例えば、土地問題というのはいま一番大きな問題になってますよね。土地を流動化してまた元のような土地活用の仕組みにするのがいいのか、これからものすごい税金を入れて何をするかというと、結局は土地を取得していくわけでしょう。
 では取得したその土地をどうするのかとなりますよね。これをまたみんなに小間切れにして売るのがいいのか、あるいはその土地を国の管理下に置いて何かするのか。日本の場合は土地の相続など、土地の所有というところにウエイトが掛かった様々な制度、仕組みが非常に多いけれども、これをもっと土地の利用というところに重点を置いた制度なり仕組みにしてはどうだろうかと。土地利用についても、国の根幹的なところを変えていくなど、これだけの痛みをみんな感じながら税金投入するわけですから、ただ単に膨らんだのがぽっと元に戻るんじゃなくて、膨らんで降りたときはちょっと発展した次の社会に降りるように、その社会の姿をイメージして実現させることが大事じゃないかなというように思うんです。
 いまの日本人ですと、住宅についてはまだ要求というのはあると思いますが、衣食についてはもうそんなにないと思うんです。生活の仕方というのは例えば北欧に行ってみるとみなさん質素な生活をして、その代わり夏休みだというとドーンと時間を取って楽しむという、そういう生活の仕方をしてますよね。
 バブルというのは、やはりあまりにもモノに捕らわれた社会というか産業文明の時期だったと思うんですね。ですから私ども民主党として、一歩前進した次の社会の姿を明確にして、それを提起し語ることが非常に大事なことだし、その絶好の時期じゃないかなと思っているんです。
 橋本政権の六大改革というのは、それを実行した後に何がどうなって社会がどうなるのか、必ずしも新しい世紀を迎えた人間の生き方とか暮らし方、あるいは経済のシステムなどを示したものではなかったというところに、実は問題があったような気がします。

福岡「右肩上がりの発想のままでは負け組」
○福岡:あの六大改革というのは、最後に教育改革が入って六大改革になるんだけども、個々によってはそれぞれ取り柄もあるんですが、結果的には総花的になって、やっぱり官僚の作文でしかなかったんですね。血が通っているわけでもなんでもない。
 僕はその教育改革のなかでいくつかとっても良いものがあると思うんですよ、あるんだけれども、やっぱりここにきて財政再建、財政改革という問題が極めてアンタイムリーであったということがすべてですよね。ですから、それはもうそれとして、橋本総理の描いたのは、やっぱりみんなで我慢して、とにかく財政再建をするんだという1つの絵ですよ。
 ところが資産デフレのときにデフレ予算を組めば、アメリカはジャパンセリングというか、日本売りしかあり得ないと、こういうことになってしまうんですね。そういうように、まさに21世紀の、2120〜30年くらい、つまり30年後ぐらいをみんながどう想定しているかというと、人口だってあと2年ほど、1億2700万人まで増えますけども、今の1.39ショックでいけば、おそらく1億1000万人を切りますよね、あっと言う間に減っていくと。そういうような時代にすべてが右肩下がりという社会構造的な問題があるなかで、いままでのようにバブルというか、右肩上がりの発想でルールを変えないまんまやってる人たちが、実はもう負け組になるというのがはっきりしている。

福岡「モノカネ主義はもう終わり」
○福岡:いま、横路さんの話を聞きながら感じたのは、みんな将来に対してお金はもっているけども、社会不安じゃないけども、やっぱり将来に不安をもっているわけですよね。
 それはつまり、社会像というか、将来的ビジョンをみんな描いてくれない。ただ、僕はいくつかの事例がこの数年間の日本の中に出てきたと思っているんです。それは、今まで考えてきたモノ、カネという主義、時代がもう完全に終わった。それは阪神淡路の戦後50年の1月17日のあのときに、神戸の被災地をすぐにボランティアで入ったんですが、あの大きなビルが倒れ、高級住宅が倒れ、そして長屋ももちろん燃えていった。戦後の神戸というのはいろんな意味では経営や効率を考えてきた神戸株式会社方式だったけれども、結果的にはそういうふうに崩れていく。モノ・カネだけじゃないんだと。そして、その後の住専の問題、最近の大蔵官僚MOFの問題、こういうものは高い学歴を持ってたってノーパンしゃぶしゃぶ行って喜んでるし、今週の週刊ポストじゃないけれども、そこの編集長が友人だけれども、また新たな六本木スキャンダルみたいのが出てきていると、性懲りもないというか。社会的な地位があるというか、大学の先生もそうだし、もちろん弁護士さんも、国会議員なんか然りなんだけれども、昔金融機関に就職した女の子なんかお嫁さんにいいとか、そういうばかばかしいことがいっぱいあった。でもいま金融機関っていうと、えーってね。昨日一緒にゴルフをやった金融機関の人は肩身狭い思いでゴルフやらなきゃいけない。
 僕はモノ、カネ、学歴、ステータスという、戦後日本人が追い求めてきたもの、それは人間のなかにやっぱり私欲という欲があるわけですよ。だけどそういうものでなくて、良い仲間や友人がいて、みんなで楽しく考えていけるというようなもの、子どもたちの教育の問題もそうなんですけども、そういうような心の問題にもつながってくる。その新しい価値観がいま変わろうとしているし、もう変わっている人もいるんですね、あの3年前から。もう3年半前になりますけども、あのときに例えば広告会社の「ヒーリングの時代」「癒しの時代」ということをあの95年の秋ぐらいから言い出しました。あのときオウム真理教もありましたね、あれも高学歴の東大出たのとか、早稲田の理工学部出た若者などの偏差値秀才達が、たった1回の麻原彰光のマインドコントロールにあってしまうと何もできない。そういう事件もあったし、東大、霞ヶ関官僚はやっぱりだめだというのが今度の一連の不祥事であったんですよ。

横路「自立したいという人がたくさんいるんですね」
○福岡:そういう伝統にあぐらをかいているある自動車メーカーとか電気メーカー、流通関係などはいまみんなバタバタ倒れている。つまりいまはその辺の伝統というか、いわゆるルールが変更になった、システムが変わった。今までのような右肩上がりじゃないよ、もう下がるんだ。おそらくいままではある程度循環があって上がってきたけども、これからはいわゆる右肩下がりでありながら少しずつ上げなきゃいけないけれども、僕は経済はそれでも3%ぐらい上げないと意味がないと思いますよ、みんな夢がなくなるから。そういうようなところの変化に気づき始めたというのが非常に大きい点だと思いますね。
○横路:昨日、いろんな分野から50人ぐらい集まって議論したなかで、教育の問題がやっぱり出ました、いまの学校教育について。そのときに北海道にある北星余市高校という学校の話が出ました。これは高校を退学した子どもたちが、また学校に行こうという気持ちになったときに受け入れている学校なんです。
 そこの生徒と親の手記が出版されたので読んでみましたが、結局子どもの思いと親と学校との間に非常に大きいギャップがあるんですね。例えば音楽が好きだから音楽のことをやりたいと、こういう道をやりたいといっても、試験の点数が良ければ普通高校へ行って普通の大学に行きなさいというふうに、枠をはめてそのレールに乗せようとしますよね。これに子どもが抵抗するという、まあ一言で言うとそんな形になっているわけですよ。ただ最近は専門学校などが随分といろんな分野に展開していまして、子どもの選択肢というのは結構広がってきていると思うんです。あとは親や学校、そして社会がその変化にうまく対応していけばいいと思うんです。
 北海道の昔の職業訓練校というのが、いまは名前を高等技術専門学院といって、旭川と帯広に木工芸科があるんですよ。この木工芸科には、大学を出た、しかも女性などが非常に多いんですね。そこへ行っていろいろ話を聞いてみますと、たまたまそのときは京都大学を卒業したばかりの女性がいましたが、自分はもともと物づくりが好きだったけれども、親から高校に行きなさい、大学行きなさいといわれて京都大学に入った。しかし結局やりたいことが何も見つからなかったというんですね。それで前から好きだった家具づくりをしたいというんで、木工芸科に入った。そこは期間が1年ですから卒業後は周辺の家具の企業に就職して、できれば自分で自立していきたいという、そういう夢や希望を持った人がたくさんいるんですよね。行ってみるとびっくりするぐらい。
 ですから確かにみんなの考え方というのも、ずいぶん変わってきているんだろうなという気がします。

福岡「今は大蔵省のお手並み拝見です」
○横路:遅れているのはやっぱり政治の分野で、今回宮澤さんが出した経済政策というか、景気対策というのは、結局は右肩上がりのなかでやってきたことを、そのままやろうというだけなんですね。
 堺屋さんもいますし、あれだけお金を投入してどんな結果になるのかわかりませんが、従来型の予算要求を積み重ねて、結局は公共事業も従来のシェア配分とまったく変わりませんでしたというのが、この2年ぐらいのことですね。本予算、そして補正予算を組んでいくと、最後トータルでシェアは何も変わっていない、ゼロコンマ何%ぐらい動いた程度の話になっちゃうんです。次の時代をつくるためにどういう基盤整備をするか、本格的にそちらへ傾斜した答申というのは、やっぱりできないんですね。
 ですから、宮澤流の今回の登場というのがこの時期の問題の始末の仕方として本当にやりきれるのか、私は大いなる疑問を持っているんですけども、先生、いかがですか。
○福岡:もともと宮澤さんは積極財政論者ですね。お話をしてて感じたのは、彼が総理の時にこの金融機関の不良債権に手をつけようと思ったんですが、経団連や金融資本から猛反対を受けて、結果的には潰れていくという、違う理由で潰れるんですけれども。彼はそれが忸怩(じくじ)たる思いだったんですね。
彼はとにかく今はデフレの時代だから右肩を上げる。経済というのはやはり2〜3%の安定成熟的な成長がなければならないと考えているんです。私たちがというか、私たちの世代よりもうちょっと上の世代が住宅ローンを背負うときに、給料が1万3千円も増える、2万円も増える、給料が7%も10%も増える時代があったわけですね。ですから、住宅ローンを背負って東京近郊に3LDKのマンションを2千万円で買った。それで銀行ローン、住宅ローンが5万円かかるけども、お父さん3年間はお小遣い増えるのを我慢してね、3年経てば1万8千円で5万4千円になるから。そういう時代には右肩上がりの経済でよかった。
 しかし土地の値段が下がって、マンションが値下がりしてゴルフ会員権が値下がりしてという資産デフレになればそうはいかない。ですからこの辺で宮澤さんが考えてるのは、とにかく右肩を上げようと。人口は減るかもしれないが、経済をそこにもってくるまで打つだけ打ってみようということですから、それはこれから数カ月がポイントでしょう。ただ最近は大蔵省が相当抵抗して、とにかく減税だって一度やるって言ったのが、法人税だって実行税率40%も、なんだか一時的とか訳のわからない言い方になってきたけども、それはお手並み拝見するしかないと思う。ただ、僕は今のお話を聞きながら、やっぱり今までやってきたような形が全然だめになった、日本の霞ヶ関の秀才たちがやっぱり単なる偏差値秀才だったと。
 いま日本人はある程度物は持っている、個人の金融資産1200兆円、それもいろいろ計算して借金も入れてですが、それでもまだプラスですよ。しかし私のある生保の友人が、日本はウルトラスーパー保険大国なんだと言いました。一人頭1600万円の保険があって、標準家庭4人で6400万円で、アメリカの7倍ぐらいあると。それは年金問題もあるんだけれど、実を言うと日本人はみんな保険付きだからがんばってやってるんですね。ここにいるみなさんは男だから、自分の命の値段がわかんなくたって、女房たちがわかってる。私たちだって知らないうちに3つも4つも入ってて、死ねば3億円くらい入るんですから、それは大変なものですよね。

福岡「官僚はマニュアル頼り。新しい発想ができない」
○福岡:司馬遼太郎は、第二次大戦中インパール作戦に参加して英国軍を指揮した参謀に戦後何十年も経って会ったことを本に書いています。彼は、なぜあのとき日本軍は壊滅的な打撃を受けたのかと聞きました。そうするとその年をとった老参謀は一言、日本陸軍の参謀たちは追いつめられれば追いつめられるほど過去の成功例を唯一の頼りにして作戦を立ててくることがわかったと。だからその逆々をやったと。百戦百発百中で、我が英国陸軍は損害低次であると。インパール作戦は日本の大惨敗の典型的なものです。
 それと同じように、バブル後遺症の巨額の不良債権を抱えてる中で、霞ヶ関官僚はずっと先送りしてごまかし続けて隠蔽工作して、隠蔽工作をして何もしなければ結果的に不良債権は拡大するから、こんなもん10兆円だ15兆円だ、結局もう65兆円ぐらい全部つぎ込んだって、何の意味もない。焼け石に水ぐらいの形にしかならない状態になって、結局は住専の処理と同じようになってしまう。住専処理はまだ6850億円だからまあ我慢してもいい。本当は我慢したくないけど、中坊さんがやってるんだからまあなんとか1円でもと思うけど、何十兆円になったら勘弁してくださいということになる。
 偏差値秀才というのは、マニュアルや参考書や先例だ凡例だと勉強しすぎちゃったでしょ。私のように途中で私立大学に行くには英国社3科目でいいわけですよ。そこでもう半分頭が空だから、知恵のめぐりはいいけどね。東大法学部といったらやっぱりどうしてもマニュアルや参考書を頼りにしてしまう。そういう話を友人の霞ヶ関官僚が言うんですから。おれたちは先例、マニュアルを参考にしなきゃ作文できないんだ。新しい発想ができない。ギアチェンジというのはできないと。
 だから今、霞ヶ関官僚はみんな自信喪失でしょ。5年前ヘッジファンドを解ってるのは大蔵官僚しか解ってないって言ってたのがね。愛する我がヤクルト球団が低迷してますけども、1077億円の損失を出したのは大蔵官僚出身の副社長ですよ。ことごとくそんなもんですよ。僕はヘッジファンドの関係者に聞いたらね、悪いけど日本人はシッティングダックだよと、座ったまんまの鴨、鴨がネギしょって来た。おいしいのをいいところで全部やられてる。おいしそうだなと思って日本の某企業が手を出す。瞬間にアメリカ人は全部売り抜けて、くず債にした。ジャンクボンドにした。

福岡「新しい発想の中から将来像の展望ができる」
○福岡:いま樋口光太郎さんという人が非常にニコニコされている。昔、同じビール業界でキリンとアサヒは61対17、3倍シェアが違っていた。それがついにこの上半期に逆転するわけですね。スーパードライのスタイニーボトルで、この夏は完全に首都圏を中心に北海道、札幌もそうでしょうけども、逆転をするわけですね。3倍をひっくり返したというのは、なかなかですよ。
 あるシンポジウムで一緒になったことがありますが、この人の本で『前例がない、だからやる』というのが7万部とか10万部売れましたが、その本にもあるように、彼は住友銀行の副頭取からアサヒビールの社長になったわけですよね。そのときにキリンビールとサッポロビールの社長に挨拶に行った、どうしたらビールは売れますかと質問をしたと。
 この質問自体も型破りですよね。それで、キリンビールの社長は適当にまあまあアサヒさんもおいしいですからと答え、サッポロビールの社長は、それはフレシュメントだと答えた。もともとアサヒとサッポロは同じ会社なんでしょ、同系会社だと思いますけども。サッポロビールの社長がフレッシュメント、ビールは新しいのがおいしい、輸送したり時間が経つと危ない。それは泡ですからね。そういう話を聞いて、彼は帰りの車の中で全営業社員を本店の食堂に呼んで、出来立てのビールと半年前のビールを飲み比べさせた、どうだと。すると全員が新しいのがおいしいと。それでいま賞味期限を書いて、3カ月で回収する、それだってイメージ作戦だと思いますけどね、そういうようなやり方をする。
 今の時代はルールが変わったんだから前例がないんだ、前例がなければなかなか成功しないんだ、だけどそのなかで5打数1安打、その1安打が逆転サヨナラホームランになって勝ち組、負け組が決まると思うんです。だから伝統だとか看板だとかにあぐらをかいた企業というのはことごとくだめじゃないですか。何か新しいことやってみようという切り替えがこの時代の新しい発想であり、その中から将来像が展望できるのかなという気がするんです。
○横路:アメリカでは大統領が変わりますと、スタッフがみんな変わるでしょう。局長以上というとみんな変わりますよね。だからその政権がどういう方針、方向でいくか1年間ぐらいわからないですよね。政権の方も、ようやく落ち着いて方針が決まったかと思うと、次の大統領選挙になるという意味では予測ができないと。
 ところが日本の政治というのは非常に予測可能性があって、安定性があるんだと。予測ができるわけだから周りの国も対応するのにそんなに苦労しないで日本という国と付き合っていけるというのが、政治の安定性、あるいは国際的な関係の安定性から言うと、日本の持っている長所としていままで言われていたんですよね。
 多分過去にはそういう側面もあったと思うんですけども、しかしいまお話があったように、その安定性の基盤になっているのは何かというと、まさに前例踏襲ですよね。外交政策もなにもいきなり変わることはないから安定感があるという意味だったんで、世の中落ち着いているときはいいけれども、こういう変化の時代になると、むしろ日銀の行動なんていうのは完全に予測されてますから、ああ円買いに入るなとかを投資家などは見て、その前例に対応すればいいわけですから儲かりますよね。しかしいまは変化が激しく、前例では対応できない時代です。何が問題なのか考えて行動しなければならない。ですから官僚主導では日本は死んでしまう。やっぱり新しい考えでやっていかなくちゃいけないと思うんです。

横路「地域ネットワークの声を具体化していくのが民主党だと思う」
○横路:最近はいろんなネットワークができてますよね。カンボジアへの支援グループのネットワークが全国にできましたし、北朝鮮への食料援助グループのネットワークもできました。この援助ネットワークは韓国国内のそういうグループとネットワークを組んだりしています。また国連の方と情報をやりとりするためにネットワークができるというように、これは福祉の問題でもなんでもいいんですが、何か自分がやろうと思って始めるとネットワークができますよね。
 問題はそういうグループやネットワークへの情報提供の仕方だとか、そういう人々が活動しながらどうしてもぶつかる法律の壁であったり、行政の壁であったりするわけですね。あと、中央省庁の縦割り行政という壁をどうやって突破するか、やっぱり最後はそこに行かざるをえないわけですね。
 その壁を突破していこうということで、私ども民主党は2年前に誕生したときから地域ネットワーク活動をバックアップする市民政策調査室というのを設置しています。そこには何人かの専門スタッフがいて、いわばNGO・NPO支援センターのような機能をもっている。ここになにか問題に取り組んでいる人々が集まり、学者や官僚などを呼んで議論する場をつくったり、またそれに国会議員が参加して、新しい法律をつくったり、法律を変えるというようなことをやっています。例えば障害者の人の統合教育ということが言われてますが、いまも地域でだいぶそういう実績広がっていっているんですよね。
 そういう地域における様々なネットワーク同士の連携をバックアップしたり、その中に政党として積極的に参加して、その声を具体化していくというようなところに民主党の新しい方向性があると思います。従来の政党というのはピラミッド型政党であって、上で決めたことがずっと下に下りていってという仕組みですが、私ども民主党はそうじゃない形にしていこうというように思っています。
 先生のなさってるカンボジアに学校を建てる運動というのは、いまどんな広がりと、どういう活動になっているんでしょうか。
○福岡:カンボジアへの学校建設や病院建設なども含めて、日本には30から40ぐらいいろんな団体があって、そのうちの1つで、カンボジアの子どもたちのために学校をつくろうという会を長い間ずっとやってて、今年からそれとはまた別にいろんな形でアシストしようと、『アシストの会』というのをつくりました。
 今回のワールドカップは残念な結果になりましたけども、いまの日本のプロサッカーはアシストの精神がないと、もうとにかく点を取った選手がテレビコマーシャルに出たりするわけですね。点を取るにはやっぱりいいボールを出してアシストする人間が必要で、点を取るのはちょっと練習すれば誰だってできる。つまりシュートを打つまでの組み立てですよね、セットアップですよ。点をとるにはその前に2つほどいいアシストのボールが出てこないと、足と頭しか使えないサッカーでは、なかなか点を取ることはできないと思うんですね。
 僕は日本をいろいろ回っていて、特にカンボジアのボランティアと神戸の仮設住宅のボランティアをしていて、日本の社会にはやっぱりいろんなアシストをしてくれる人たちがいっぱいいるんだと実感しました。それは例えばこの前、札幌グランドホテルでチャリティーをやりましたが、地元の人たち千人以上が何千円の切符を買って参加してくれたり、いろいろな企業が、じゃミルクを出しましょうとか、洗剤を出しましょうとか、いろんな形でバザーに参加してアシストしてくれていたり、それから友人の渡瀬恒彦だとか、教え子の中畑清たちが手弁当でやってくれるという、そういうようなものが全部できあがってくると、それがまさにアシストの精神であって、そもそも日本人には本来あったことですよね。

福岡「アシスト精神がボランティア活動に出てくるわけです」
○福岡:私なんか東京下町葛飾柴又生まれですから、私が小さいときに母親が「政行、隣に行って醤油借りてきて」とか、「味噌借りてきて」なんて何も恥ずかしくなかった。それでおでんができたからお返しにということで、おでんを丼ぶり一杯ぐらい持って行くというのが当たり前のようにあった。
 でも今なんかそんなのはみっともない、恥ずかしいと。それにいまはマンション暮らしが多いでしょ。マンション暮らしで隣に誰が住んでいるのか知らない、交流もない、これといって挨拶もない。だから、死んで何カ月も経っても誰も気づかなかったというような事件がいっぱいあるわけですよ。
 でもいま、その見失いかけていたアシストの精神が、いろんなボランティア団体や市民の村起こし運動やなんかで出てきているわけですね。それをうまくインターネットでつなげる。そして法律的にどうバックアップするか考えたり、あるいは情報収集センターをつくって情報交換の場をつくる。
 真の政治家が少なくなって、政治がだめになって、官僚もだめになって、日本を支えていた金融関係もだめになって、日本のいわゆるステータスのなかで「末は博士か大臣か」なんて言われたのが、いまでは「末は博士か大臣か、官僚にならないようにね」というのが子どもたちの合い言葉になっちゃったわけですよ。そんなとき、もののけ姫のようなアニメを一千万人を超える子どもたちが見て、環境の大切さ、人の心のやさしさ、ただ環境だけが大事なのではなくてどうやってみんな一緒に生きていくのかというのを、みんな自問自答する。宮崎駿の難しいアニメを子どもたちは見て考えたわけですね。

横路「いま得た教訓を次の時代の政治や行政の基本に」
○福岡:私は、いまは一人で何かできるという時代ではない、みんなの力の輪でもってできあがってくるという、そういうようなアシスト精神の一つの流れを日本につくってみたい。いまはモノ・カネ・学歴・ステータスの時代じゃないんだと。そういうようなことを思って、いま本を出すところでして、その結びには、もうギアチェンジしようと書いてあるんです。いまはそうしなければやっぱりだめなんだというような気持ちで7、8年ボランティア活動をやってます。ボランティアは10年やって一人前ということで、まだ7、8年ですから、なんともいえないけども、だんだんとそういうような形になっている。
 いまカンボジアに病院をつくろうとしている団体に、この前こちらでいただいた100万円をお届けしたり、日本のアリの街でずっと献身的な活動をされたコルベ神父、彼は戻ってアウシュビッツで亡くなられたんですが、その彼に付いてきたゼノ神父の一生を描いたアニメで『1本のろうそく』という、クリスチャンはろうそくの火のように生きなさい、自分の身をつぶしながらも周辺に貢献して光を与えなさいというアニメにも100万円をお届けしたり、あと神戸の仮設住宅やカンボジアの学校建設などにもというような形で、少しずつでも何かやっている方々に、いろんなネットワークを広げていこうという気持ちになっています。
○横路:そういうボランティア活動というのは政治や行政が知っている以上に広範囲に広がっているんですよね。
 まさにそういう意味で言うと、バブルというのは20世紀の日本の最後の姿にして、ここで得た教訓を次の時代の新しい日本と世界の生き方や暮らし方、政治や行政の基本としていくということで私ども民主党もがんばっていきたいと思います。
今日はどうもありがとうございました。
○福岡:ありがとうございました。

対談終了

福岡政行(ふくおかまさゆき)氏 略歴
 1945年9月9日生まれ
 1968年  早稲田大学政治経済学部 卒業
 1973年  早稲田大学大学院政治学研究科博士課程 終了
 1973年  明治学院大学法学部 非常勤講師
 1976年  駒沢大学法学部 専任講師
 1980年  駒沢大学法学部 助教授
 1992年  白鴎大学法学部 教授 (政治学)

 著 書  現代政治分析理論  (早稲田大学出版)
      現代日本の政党政治  (東洋経済新報社)
      時代の潮目を読む  (日本経済新聞社)
      手にとるように政治のことがわかる本  (かんき出版)
      できることからボランティア  (郁朋社)
      永田町の通信簿(共著)  (作品社)  など