年頭メッセージ「真の幸福、自然との共生を考える」

 

 新しい年2012年を迎えましたが、皆様お一人お一人にとって本当により良い一年でありますように心からお祈りを申し上げます。

 昨年3月11日のあの大震災では、2万人近い人々が一瞬のうちに亡くなりました。両親を失った子どもが240人もいるという本当に信じられない大変大きな被害となりました。
 そして私たちは、原発の事故を含めて、日本の行く末や私たちの生き方などを根本的に考えさせられた一年でもありましたし、日本の歴史にとって忘れることの出来ない、忘れるわけにはいかない2011年だったというように思います。

 震災で一瞬のうちに多くの人々が家族や友人を失い、住む家も無くなり、仕事も無くなってしまい、学校にも行けず、住み慣れた町並みも跡形もなく無くなってしまいました。
 あの当時、ある新聞に「幸福は どこにあったか 思い知る」という句が載っていましたけれども、日常の私たちの毎日の生活、帰るべき家があって、家族や友人に囲まれ、仕事もあり、行くべき学校もあって、住み慣れた町並みの中で、たまには帰りに友達と一杯飲むというような生活。こういう生活がいかに大切なのかということをみんなが知った、そういう一年間でもありました。

 たまたまブータンの国王が日本に来られたこともあって、「幸福」とは一体何なのかということに国民の大きな関心が生まれました。
 ブータンでは、経済成長の豊かさだけを求めるのではなくて、国民生活の様々な要素から幸せを追求するということを国の目標にしています。それには4つの柱があり、その柱のもとに9つの分野があります。たとえば心理的な幸福、あるいは国民の健康、教育、文化の多様性、地域の活力、環境の多様性と活力、時間の使い方とバランス、生活の水準と所得、そして国の良き統治などです。
 さらにいま申し上げた9つの項目をそれぞれ指標がありまして、それは全部で69からの指標になっています。たとえばこの中に地域の活力という指標がございますけれども、地域の活力ということの中には、家族はお互いに助け合っているかとか、コミュニティのいろいろな作業を手伝ったことがあるか、友人とどれくらい一年間に会っているのか、困ったとき隣の人は助けてくれたかということなど、大変興味深い内容になっています。

 ベースにあるのはやはり仏教的な価値観で、物質的な繁栄よりも精神的な充足感ということを重視しています。
 ブータン国王は慶応大学で講演されて、最近は携帯電話とかインターネットがどんどん普及するにつれて、人と人との絆、人と人とのふれあいというものが薄くなってきたのがブータンでも大変心配だというお話をされていましたけれども、市場経済がもたらす個人の欲望でありますとか消費の拡大、それに伴う人間関係の希薄化や共同体の消滅といったようなことへの心配などから、こういう幸福度、幸福量ということを指標として国の目標としていくという方向なんですね。
 このことについてここ数年間、先進国の中でも参考にしていこうという国もありまして、国際会議なども開かれているところです。
 ちなみにある大学で調査しまして、178カ国のうち、ブータンの国民は「幸福です」という回答が178か国中8番目で、日本は90番目ということになっています。
 今回の震災を通じて、私たちも日本の社会をどういう具合にしていったら良いのかという非常に一つのサジェスションになるのではないかと思います。

 また前にもお話しましたけれども、今回の津波、高いところで39.7メートルということで、ビルの13階にまで到達するものでしたけれども、松島湾の湾岸にある貝塚の遺跡、これは住居跡と併設されています、2000年から3000年前の縄文時代のものですが、これは津波の被害にどこも遭ってないんですね。
 いま復興計画で高台に移ろうとすると遺跡が出てくると。あの奥尻の地震の時も、奥尻空港のそばに、これは最近分かってきたんですが、オホーツク文化の遺跡があります。昔の人々はやはり自然とともに生活をし、自然に畏敬の念を持って生活していたんですね。
 私たちはだんだんと、堤防を造っているから大丈夫だとか、やはり海のそばの便利なところがいいということで、昔の人の知恵を失ってしまっていると思います。やはり自然との共生ということですね、これをやはりしっかり考えていかなければいけないなという思いをいたしました。

 これからまだ復興したり、原子力発電所もきれいになるのに40年もかかるというような話でございます。これからのエネルギーをどうしていくのかということなど含めて、国会もしっかり議論をする、そういう本当に大事なときを迎えていると思っております。
 私たちはこういう問題を一つ一つ避けないで、まず政治家がしっかり問題と向き合う。そして国民の皆さんにも何が問題なのかということをしっかりとお話をして向き合ってもらう、ということがいま一番大事なことではないかと思っております。
 どうか今年、より良い一年でありますようにお祈りいたします。


   2012年 1月 1日

横 路  孝 弘