不平等が健康を損なう

 

 皆さんこんにちは、横路孝弘です。
 いよいよ通常国会が始まりました。小泉政権も誕生して4年近くになろうとしているわけですけれども、小泉さんのやってきたことを考えて見ますと、完全にアメリカ社会を目標にしている、理想にしているとしか言いようがありません。
 日本の社会の中で物凄く貧富の差が拡大して、二極化が進んできました。所得階層を4つに分けると、上位4分の1の人々が所得全体の4分の3を占める社会になってしまいました。

 私は最近、『不平等が健康を損なう』というハーバード大学の教授らが書いた本を読みました。その日本語訳の序文の中に、「日本人はなぜ長寿なのだろうか」と書いてあります。第2次大戦後に日本人の平均寿命はたくさん伸びた、それはどうしてなのだろうかと。医療にお金をたくさん使ったからだろうかというとそうではないんですね。国内総生産に占める医療費の割合は、今でさえ日本はアメリカの半分以下なんですね。それなのに日本人はアメリカ人よりも3年も4年も長生きしているわけです。
 では日本の生活水準が高いのかというと、一人当たりのGDPはアメリカに比べると5000ドルも低いんですね。平均的なアメリカ人のほうが可処分所得も高いし、広々とした家に住んで、大きな車に乗っています。しかし日本人より寿命が短いんです。
 では生活様式の文化的違いなのだろうかと見ると、アメリカ人男性に比べて日本人男性の喫煙率は2倍も高い。しかも過度な飲酒傾向も日本のほうにあるようです。
 しかも面白いのは、日本人がアメリカに移住すると寿命が短くなっていることです。死亡率で見ると、日本に住んでいる日本人が一番死亡率は低い。ハワイのホノルルに移住した日本人がその次で、カリフォルニア州サンフランシスコに移住した日本人の死亡率が一番高かったんです。
 そうするとどういうことなのだろうかということで、この本の中では分析の結果、社会の内部における経済的な格差、あるいは地域や職場における社会的な結束、そういうことが人々の健康を左右する重要な要因なのだと主張しています。

 そしてこの本は最後に、「いかなる政治家の人も、本当に良い社会としてめざすべきものが、市民の健康と幸福を最大化するということならば、アメリカの資本主義のマイナスの側面からじっくりと教訓を得なければなりません」「日本はアメリカの真似をしたのでは大変です」ということを指摘しています。

 OECDに加盟している国の中で、日本人の所得格差、貧富の格差は、世界の中でもう上から5番目なんです、1位からアメリカ、イギリス、オーストラリア、アイルランド、日本となっています。その結果、例えば医療の面や人々の生活の面でどんな状況が出るのかということを大変詳細に分析しています。
 やはり二極化するのではなくて、みんなが生活ができるような環境にあることが大事なんだと痛感いたしました。不平等をなくすということが政治の大きな目的であって、そのことが人々をより健康にするんだと強く感じました。
 大変おもしろい本です。日本評論社から出ています『不平等が健康を損なう』という本です。

   2005年2月1日

横 路  孝 弘