戦前を思い起こす「有事法制」

 


 皆さんこんにちは。今日は憲法記念日です。
 お天気はだいぶ暖かく陽気になってまいりましたが、永田町は最悪の状況です。

 つい先日「有事法制」が政府から提出されました。「備えあれば憂いなし」と小泉さんは言っていますが、では有事立法でどんなことを備えようとしているのか、この法律案を見てみますとびっくり仰天です。

 例えば「警報の発令、避難の指示」というのがあります。避難場所を決めて、シェルターを作る。シェルターとは防空壕です。そして避難道路を指示するというわけです。
 しかしいま、大都会の真ん中で防空壕をつくる余地があるのでしょうか。避難場所といってもどこを避難場所として想定すればいいのでしょうか。どこに飛んでくるかわからないミサイルに対して、どこに避難せよというのでしょうか。全く現実味のない、大いに問題のある点です。

 これを戦前で見てみますと、戦前は「防空法」という法律があって、町内に「隣組」をつくって町内会を中心に民間の防空体制が取られました。そしてそれをもとに防空壕を掘ったり避難をするという体制をつくったのです。そんなことをまたやろうとしているのでしょうか。

 それから「国民生活物資の価格の安定や配分その他の措置」というのがあります。これはどう考えてみても「価格統制と配給」ということを思い起こさざるを得ません。
 この市場経済の中で、生産や流通や消費に政府が介入するということになれば、まさに「経済の軍事化」が進みます。そんなことの可能性があるのでしょうか。

 また「社会秩序を維持するための措置」という項目もあります。社会秩序の維持という言葉を見ると「治安維持法」を想像し、ゾッとしてしまいます。

 それから国民の理解と協力を得るということで「国民の徴用」を考えるというのです。医師や歯科医師、看護師、薬剤師など医療関係の人々、パイロット、機関士、船員、トラック運転手などの輸送関係の人々、そして土木関係の人々。こういう人々を徴用するというのです。そういう人々に「従事・従軍命令」を出して、断れば処罰するというわけです。
 そうすると日頃から、どこにどんな医師がいるのか、特に外科医がどこにいるのか、どこにパイロットがいるのかということを調べる必要があります。これについても戦前に「徴用令」「能力申告令」などという勅令が出まして、国民は「自分はこういう能力を持っています」という申告をして登録されていました。
 あるいは捕虜収容所をつくるというようなものも今回の有事法制の中に出てきています。

 さらに有事の際には、国民の基本的人権が制限されるということや、自治体は総理大臣の指示のもとに入るということなど、現行憲法のもとで考えられないような新しい法体制をつくろうとしているわけです。

 日本に有事法制が無いわけでありません。ご承知のように自衛隊法が有事法制なのです。もし自衛隊法に不充分があるならば、そこを補えばいいわけで、こうした全く新しい法体系をつくるということは許されることでありません。

 しかもこの有事法制が現実にどういう点で機能するかといいますと、「日本有事」の概念の中に「周辺事態」も入っています。つまり極東における有事です。
 ブッシュ米大統領はイラン、イラクと並んで北朝鮮を「悪の枢軸国」と指定しました。そして核査察などを認めろという要求を出しています。もしアメリカが専制的な攻撃をすれば、それは日本にとっての周辺事態になってしまうのです。
 「日本有事」というのは今の国際環境の中で起こることはないと私は考えています。ありうるとすれば、アメリカが起こした紛争が日本に波及するということだけでしょう。

 これから2年かけて今回出された有事法案をもとに具体的な法律をつくるということでありますが、いずれにしても国民の権利を縛るものでありまして、こんな法律をいまつくる必要はありません。
 いま大事なことは、失業や倒産、こういった事態から国民の生活をしっかり守ることだと思います。


  2002年5月3日

                                               横  路  孝  弘