「もうひとつの予算委員会」所信表明
2000年2月3日
横路孝弘予算・決算ネクスト・キャビネット大臣

はじめに

 2000年度政府予算案について、財政問題、公共事業、行政改革などを中心に民主党の考え方を明らかにしながら問題提起をしたいと思います。
 2000年は、新しい千年紀のスタートの年ですから、希望に溢れた1年にしなければなりません。それにはまず政治を変えること、政権を交代することが本年の最大の課題であります。

小渕総理の姿勢
 「何でもあり」という小渕総理の旗の下で今ほど日本列島全体が、不安で覆われている時代は日本の歴史上ありません。
・ 自殺者の数が31,755人で史上最高
・ ホームレスの数は札幌から那覇まで全国の都市に昨年は2万人を超えて史上最高
・ 1999年の完全失業率は4.7%と完全失業者は初めて300万人を超える過去最高
・ この春卒業する学生諸君のうち、まだ24万人の就職が決まっておらず、就職内定率は過去最低
・ 生活保護額は過去最高の1兆5000億円を超えるのは確実で、受給者は110万人を超えて過去最高
・ 2000年末国債発行残高は364兆円、同じく国・地方の債務残高は645兆円で史上最高かつ世界一

 こうした厳しい社会の情勢に対し、小渕総理は何か心配しているのでしょうか。この1月のある新年交礼会で、「日本の歴史上、1000年紀のスタートの年に権力者は2人いた」と言って、「2000年の時は小渕恵三であり、1000年の時は藤原道長である」と挨拶をしたのです。あきれたのは私だけではないでしょう。
 藤原道長といえば有名な「この世をば我が世とぞ思う望月の欠けたることのなしと思えば」と歌った人である。
 この発言は国民が主権者であることを忘れた、思い上がった発言と言わざるをえません。自自公の与党で衆議院70%という数の力が言わせているのでしょうか。しかし必ず「自自公をリストラしたい総選挙」と国民は審判を下すでしょう。

 小渕総理の2000年度予算案は、問題解決の先送りとバラマキの予算案で「行き先知らずの船」ですから不安が広がるのは当然です。
 私たちは経済や景気、環境や福祉、そして教育や平和など、「安心の21世紀をつくる」ことを大きな目標にしています。そのためには行政、財政改革を今こそ行わなければならないと考えています。

日本のこれからの方向性
 そのためには、まず100年先を考えましょう。
 はっきりしていることの一つは、現在の生産の仕組みを続けていく限り、地球の温暖化が進み、平均で2〜3度上昇するということです。北海道など北の地域は5度上昇するといわれています。気温が1度上がりますと赤道に300Km近づくといわれていますので、地球が今のまま生産の仕組みを続けますと、森林などの生態系の破壊などが進み、地球は大変になります。なんとしても地球の温暖化は防がなければなりません。
 地球温暖化はいままでの工業社会の結果です。大量に生産して、消費し、廃棄する工業社会を変えていかなければなりません。これからの社会は情報社会、環境循環型社会に向かって進んでいかなくてはなりません。

情報社会
 情報社会では人々の生活も生産も大きく変わるわけですが、生産も従来の方式が変わります。
 例えばデル・コンピュータで生産されるコンピュータ製品の約40%は客からの直接注文です。客がホームページの中で、メモリーやハードディスクなどについて自分の好みの仕様を指定し、その情報をもとにデルは生産します。今後自動車などの生産は、そのように変わっていくでしょう。
 またスーパーマーケットでも瞬時に売上状況が分かりますから、スーパーと物を作るメーカーが提携して、メーカーがスーパーの売上状況を見て商品を生産・供給するシステムが取られています。つまり消費者の選択に従って、それに応じて物の生産が行われ、大量生産ではなくて、適量生産、適量消費、そしてできれば極小廃棄というような社会になっていくわけでして、生産の仕方も仕事のやり方も暮らし方も大きく変わっていくものと思われます。

環境循環型社会
 現在、大きな課題は環境循環型社会をつくることです。環境問題について日本でも企業による大きな投資が行われています。工業社会は大量のゴミを生み出しました。日本でも家庭用ゴミは年間5000万トン、産業用ゴミは4億トンのゴミを排出しています。これからはゴミゼロ社会をめざしていかなければなりません。そのためにはリサイクル、リユースなどを進めていくことが大切です。
 例えば自動車のように、燃料電池の開発や軽量化による燃費効率の向上をはじめ100%リサイクルをめざしてあらゆる部品、素材の開発が行われています。
 日本の競争力をもった産業として、これまでの技術の蓄積も生かして、次の日本や世界の経済を担いうる可能性がある分野なのです。そのためには、行政も企業もそして私たち一人一人も、生産や生活を皆で考え協力していかなければなりません。
 これらの情報社会、環境循環型社会に向かって基盤整備、技術開発、研究投資、人材の育成に予算の集中が必要なのです。しかし日本は相変わらず、原子力と宇宙開発に科学技術予算を投入しています。その挙げ句の果てがH2ロケットの失敗であり、JCOの大事故なのです。

福祉社会
 もう一つの問題は100年後、日本の人口が約6700万人と現在の半分になるということです。
 日本の労働力生産人口は2005年にピークを迎え、人口は2007年がピークとなり、高齢化のピッチはますます早くなります。福祉社会への転換を図り、子供を育てることと、お年寄りの介護を社会がしっかり支える仕組みを基本とする社会への変化がいま必要なのです。
 社会的セーフティーネット、公共財としてのセーフティーネットはもちろん、中央・地方の政府の果たす役割は大きいわけですが、すべてが政府の手でできるわけではありません。
 もちろん市場がすべてを供給できるわけでもありませんが、市場も供給する分野、参入しうる分野は増えるでしょう。そしてこれからは市民が参加し、市民事業として参加しうるNPO,ボランティアの活動がウエイトを高めていくでしょう。 
 公的セクター、民間セクター、市民セクターがネットワークを組んでそれぞれの役割を果たす、そういう社会にこれからの日本は変わっていかなければならないだろうと思います。
 ここにも基盤整備が必要で人材育成や施設整備、グループホームやケアハウスなどへの予算の集中が大切です。
 日本の社会はこうした大きな変化の最中にありながら、政府の財政投資は工業社会をベースとした基盤整備や人づくり、税制、補助金制度になっています。まずここから大きく変えなければいけません。

2000年度予算(案)
 政府の2000年度予算(案)は一般会計で約85兆円、租税収入約48兆円、国債発行約33兆円です。そして2000年末、国債発行残高364兆円、国と地方を合わせて債務残高は645兆円となります。小渕総理は、小渕政権後2年間で国債発行を84兆円増加させ、その結果GDP比債務残高129%となりました。これは、1997年度のロシアより悪い、惨々たる結果です。
 例えば3%の成長でも、税収増はわずか1兆4000億円程度ですから、毎年30兆円の国債発行が必要になるのです。一体どうしてこうなったのでしょうか。
 それは、小渕総理が行ってきた「見直して、先送りして、棚上げし」と川柳でいわれているように、構造改革を遅らせ、利益誘導型政治を行っているために、規制や保護行政が民間活力をそぎ、高コスト体質をつくってしまった結果ではないでしょうか。そして、旧来型の公共事業中心の景気対策を繰り返してきた結果なのです。
 財政は危機の限度を超え、奈落の底に落ちる事がわかっているのに、全く構造改革の視点を欠いた財政支出を行っているからです。
・ 介護保険料の徴収の先送り
・ 朝礼暮改というべき、本年度引き上げた年少者の扶養控除額を元に戻した児童手当
・ 選挙でお世話になっている医師会のための、抜本改革なき医療報酬の引き上げ、高額医療の引き上げ
・ 多くは貯蓄にまわった地域振興券
 こうしたバラマキ体質は自自公の連立政権になってから、さらにひどくなっており、財政危機に拍車をかけています。

 「二兎を追う者は一兎をも得ず」として景気と財政構造改革を対立させて世界一の借金王になった小渕総理は、それでは「一兎を得た」のでしょうか。失業者が増え、新卒の就職も厳しく、正社員がリストラされてパート労働が増え、また、生活保護世帯が増える中で個人消費は増えるのでしょうか。本年度は本当にプラス成長なのでしょうか。小渕政権は政権就任以来、予算を含めて315兆円を超えるお金を投入し、84兆円の国債を発行し、「一兎も得られない」のではないでしょうか。小渕総理、責任はどう取られるのですか。
 私たちは「景気回復なくして財政再建なし、財政規律無くして景気回復なし」と考えています。「二兎を追って、はじめて二兎を得る」ことができるのはアメリカやスウェーデンなどの国が示しています。

私たちの基本的立場
 日本経済を発展させるには、新しい視点で経済産業政策を再構築し、同時に行財政改革を行うことです。まずやらなければならないのは、中央政府の権限を地方へ、市場へ、市民へと分権すること、そして次の3つのことをしっかり実現することが重要です。
・ 民間が自由に活動できる市場、自由で透明・公正な市場を作ること。
・ 市民が主役となる政治の実現と地方主権の確立を図ること。
・ 社会的安全網(セーフティーネット)の整備を行うこと。

 そのうえで、4つの改革が大切だと思います。それは
@ 行財政改革をすすめて、効率的でかつあたたかい政府をつくること
A 税制改革を行うこと
B 公共事業の改革
C 社会保障制度の改革
 これら4つの改革のうち、いくつかの点についてご説明したいと思います。

財政再建
 財政再建についてですが、財政再建には何よりも歳出のカット、歳出構造の改革など、歳出の切り込みが大切ですが、同時に税制の抜本的改革が必要です。(社会保障制度の改革については、2月4日の「もうひとつの国会」―国民福祉・厚生委員会で行います)
 
税制改革の原則について
 税制改革について、原則だけ述べたいと思います。税には所得課税、資産課税、消費課税とありますが、個々バラバラの改革ではなくて、総合的に改革しなければなりません。まず総合課税を実現すること、そのためには納税者番号制度の準備が大切です。そして税制はなにより公平、簡素、透明でなければなりません。
 税はできるだけ多くの人が、それぞれの能力に従って負担することが大切で、所得再配分機能を果たし、低所得者には政策で支援することです。また、消費税の改革や外形標準課税の検討をすすめ、道路特定財源は一般財源化することが必要です。

公共事業の改革について
 次に公共事業についてですが、社会経済状況が大きく変化しているにもかかわらず、省庁別、事業別の配分はほとんど変化がありません。バブル以後100兆円近い公共事業を行ってきましたが、その波及効果なども落ちてきており、最近では福祉投資のほうが雇用効果は、はるかに大きいといわれています。
 地方財政も厳しく、地方単独事業は平成11年度補正予算後では16%も対前年度を下まわっています。もう「笛吹けど踊らず」といった状況になっています。公共事業には、事前評価や事業途中での評価とチェックが必要です。社会に対応していない農業土木事業や環境への影響が大きな林道、「一度決めたから」という以外の理由がない徳島県の吉野川可動堰等の総点検が必要です。また、直轄事業はあれほど議論されたにもかかわらず建設省予算で平成11年度は直轄で全体の27.72%、来年度は27.52%という現実です。何も変わっていません。地方分権推進委員会の議論は一体何だったのでしょうか。
 公共事業は2000年度予算で9兆4307億円ですが、私は公共事業について次のことを訴えています。
・ 直轄事業を例外は認めるとしても、原則的には地方に移すこと
・ 地方への個別補助金をやめて一括交付金制度にすること
・ 評価制度の確立(事前ならびに事業途中)をすること
・ 事業の優先度を行うこと
・ 公共事業予備費をやめること

行政改革について
 行政改革を進めていくうえで大切なことは、各省庁のもっている規制は社会的規制を除いてできるだけ縮小することであり、同時に個別補助金をやめることです。補助金は2000年度予算において、20兆6969億円(内、16兆9000億円は地方)が計上されています。
 私どもは、補助金は地方分権推進委員会が指摘しているように、「ひも付き財源」であるから、できるだけ縮小すること。また、補助金の申請は地方自治体の日常業務の30%を占めており、個別補助金を一般財源にすることで中央・地方ともスリムにできると訴えていますが、しかし来年度予算において減少するどころか、増加しているのです。

 また最近こういうケースがありました。
身体障害者の人から「車いすの補装具を付けるために、補助金の申請を昨年の7月に行った。各自治体はスムーズに申請を受理してくれたが、厚生省からまだ返事がこない、一体どうなっているのか調べてほしい」との要請を受けました。皆さんご承知のとおり、車いすには補助金が出るのですが、補装具の補助金は要綱どおりですと地方の判断で出るのですが、要綱にないもので、例えば泥はねを付けるとか、重いので新しい機械を購入しようとすると、全部厚生大臣と協議することになっています。自治体が厚生省に書類を上げたのが9月でしたからもう4ヶ月以上経過しているのです。
 こういうことは市町村で判断すればよいことで、わざわざ都道府県を経由して厚生大臣と協議して、またそこから下におりてくる。だから半年も1年もかかってしまうのです。こんなことは即座に止めなければならないと思います。補助金の廃止は行政改革を進める上で大変重要なことです。

 また、2001年1月1日からスタートする新しい省庁ですが、省庁の数は減りましたが、権限がむしろ増えておりますので、何の行革にもなっていません。政府の規制、これだけの言葉が法律や通達の中にあるのです。
許可、認可、免許、特許、承認、認定、確認、免除、決定、証明、認証、解除、公認認、検認、試験、検査、検定、指定、登録、届出、申告、提出、報告、交付などです。
そして規制は増加しているのです。やはりここからしっかりと行革していかなければ、省庁の数を減らしたからといって、何の改革にもなっていないわけであります。それを私どもは進めていかなければいけないと考えております。

 これらの改革を私ども民主党、全力を注いでやってまいりたい、このように考えております。

 政府の2000年度予算案は、本当に何の思想もなし、行き先を明示もしない相変わらずの予算であって、あのような予算は認めるわけにはいかないということを申し上げて、私の与えられた時間になりましたので終わらせていただきます。