日本的な価値や文化、モラルを大切に
2001年2月9日

 横路孝弘は、(財)野村生涯教育センター主催の研修会(東京代々木:青少年総合センター)で、「21世紀…日本の現状と役割」と題して講演を行ないました。その要約を掲載いたします。

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「21世紀 …… 日本の現状と役割」

 我々は将来に大きな不安をもって新世紀を迎えた。しかし我々は希望をもたなくてはならない。そのためには、20世紀が日本と世界にとってどんな時代であったかを見つめ、その反省の中から21世紀を考えていかなくてはならない。
 上智大学の学長をされたヨゼフ・ピタウ神父は「終戦後の日本人は教育と平和、この二つの上に新しい日本の将来を築こうとしていた」と言われた。しかし、豊かになった後の日本人は、謙虚さと精神の価値を失ってしまったようだ。
 最近の日本は、犯罪や家庭内暴力、児童虐待などの件数が激増している。また、自殺者やホームレスも急増し、失業者も日に日に増えていっている。なぞ、このような社会状況になってしまったのか。よく“失われた10年“ということが言われるが、私は“日本的な良さを失った10年”ではないかと思う。日本的な良さにもいろいろあるが、まずひとつに、我々日本人は汗水流して働けば必ず報われるという労働観をもち、モラルを持って仕事をしてきた、勤勉、誠実、努力、奉仕の社会だったということがある。
 ところがバブル経済の中でそうした労働観、モラルが失われ、日本中が金まみれになってしまった。
 次に日本の良さとしてあげられるのは、自然との共生であった。自然に神を見、畏敬の念を持っていた。したがって謙虚になれた。
 だが、これも経済最優先の中で自然への畏敬を失い、金儲けのために急激な開発を進め自然を破壊してきた。そして自然に対する謙虚さを失ったと同時に、社会に対する謙虚さも、世界に対する謙虚さも失ってしまった。
 もうひとつ日本の良さは、みんなで協力し合う社会であったということである。これがズタズタになったのがこの10年間のリストラである。企業は利益を上げるために人件費を削減し、その急激なリストラによって会社の中の人間関係も滅茶苦茶になってしまった。また、このことが前述したように社会に様々な問題を生み出し、国全体としては大変な社会コストを負担することとなった。
 近年、競争と効率が何より大切であるとするアメリカ的な市場主義の考え方が入ってきている。経営者の中にも「日本的経営や雇用が今日の不況を招いているから、これを変えなければならない」と主張する人が増えている。しかし、本当にそれでいいのかをよく考えなければならない。
 いま我々は、日本人が大切にしてきた価値観や考え方をもう一度見つめ直して、これから歩んでいく基軸をどこに置くかを考えなければならないのではないか。やはり我々は日本的な価値や文化を大切にして、協力し合う社会にしていかなければと思う。失われたモラルを取り戻して、共に生きることのできる社会をつくらなければならない。そのためには人間の絆、愛情、思いやり、連帯感、相互理解というものが必要だと思う。
 また、日本が世界の中で果たさなければならない役割は多くあると思うが、最大のものは何といっても平和への貢献である。やはり日本は憲法で紛争を軍事力で解決しないことを決めたのだから、それを大事にしていく必要がある。その憲法第9条を、日本が世界に先駆けたものとして歴史の中に残していけるように努力しなければならないと思う。